泌尿器科
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膀胱とは?
膀胱は骨盤内にある臓器です。腎臓でつくられた尿が腎盂(じんう)、尿管を経由して運ばれたあとに、一時的に貯留します。内側は尿路上皮(移行上皮)という粘膜でおおわれています。一種の袋の役割をもっています。膀胱には、尿が漏れ出ないよう一時的にためる働き(蓄尿機能)と、ある程度の尿がたまると尿意を感じ尿を排出する働き(排尿機能)があります。
膀胱がんとは?
膀胱がんは膀胱の尿路上皮(移行上皮)粘膜より発生する悪性腫瘍です。
特徴
- 空間的、時間的多発性です。
- 診断時すでに膀胱内腔において異所性に多発する場合や、内視鏡下による切除後に膀胱内再発を認める頻度も高いです。
- 膀胱同様尿路上皮粘膜を有する腎盂・尿管・前立腺部尿道といった他の尿路に病変を合併することも多いです。
以上のため、膀胱がんを診断した際には尿路全体をスクリーニングする必要があります。
膀胱がんの危険因子
喫煙
喫煙者は非喫煙者に比較して2~4倍、がんになりやすいです。いかに寄与するか詳細は不明です。喫煙者に発生する膀胱がんは非喫煙者の場合に比して、よりサイズが大きく、多発する傾向で組織学的により高異型度の傾向があります。
職業性発がん物質への暴露
化学染料中に存在する芳香族アミン類への暴露
- 若年発生の傾向があります。
- high grade、high stageの筋層浸潤がんが多いです。
- 上部尿路再発のリスクが高いです。
膀胱の慢性炎症
扁平上皮がんという比較的稀な膀胱がんの原因として慢性尿路感染症があります。(エジプト、ナイル川流域の風土病であるビルハルツ住血吸虫症)
特定の抗がん剤
抗がん剤または免疫抑制剤として使用される薬剤(シクロフォスファマイドの連用)
放射線治療に伴う二次発がん
診断方法
症状
血尿(約85%、無症候性肉眼的血尿・顕微鏡的血尿)、頻尿、排尿痛などの膀胱刺激症状を認めることもあります。
- 無症候性肉眼的血尿を主訴とする患者の13~28%が膀胱がんと診断されます。
- 顕微鏡的血尿を主訴とする患者の0.4~6.5%が膀胱がんと診断されます。
- 膀胱刺激症状は膀胱がんの約3分の1で認められ、膀胱壁内筋層に進展する筋層浸潤がんや高異型がん細胞が粘膜表層に広がる上皮内がん(CIS)に伴うことが多いです。
初期診断
膀胱がんが疑われた場合は膀胱鏡検査や経腹的超音波検査により腫瘍を確認します。
膀胱鏡検査
膀胱鏡所見で筋層非浸潤性がんか筋層浸潤性がん※1か大まかな区別はできます。
※1筋層浸潤性がん:
遠隔転移の判定のため全身CT検査や骨シンチグラフィをおこないます。腎盂・尿管にもがんが発生している場合があるため病変の有無をチェックするCTや排泄性腎盂造影(DIP)をおこなうことがあります。筋層浸潤の判断のためにMRIを行うことがあります。
経腹的超音波検査
体表(お腹)から超音波にて膀胱に腫瘍がないかを調べることができます。膀胱に尿を溜めた状態でおこないます。
顕微鏡的血尿を主訴とする患者の診断
尿細胞診検査
尿中に排出される尿路上皮剥離細胞の異型度を病理学的に診断する方法です。感度は40~60%、特異度は90~100%(高分化な筋層非浸潤がんの検出能が低い)。
5段階法で評価する場合は
- 1、2は陰性(悪性所見なし)
- 3は疑陽性(悪性の疑い)
- 4、5では陽性(悪性所見が強く疑われる)
治療方法
手術(外科的治療)
膀胱がんの外科的な治療は大きく分けて2つあります。
- 内視鏡で腫瘍を切除するTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)
- ロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術(RARC) →ロボット支援下手術の詳細はこちら
膀胱全摘除術+尿路変向術
筋層浸潤性がんと一部の筋尿路変向術層非浸潤性がんの最も有効な治療法です。
全身麻酔で下腹部に切開を入れ尿管の切断をした後に膀胱の摘出をおこない、男性では前立腺と精嚢(せいのう)を摘出します。がんの状態によっては尿道も摘出することがあります。女性では子宮と腟壁の一部、尿道をひとかたまりとして摘出するのが一般的です。骨盤内のリンパ節の摘出(骨盤内のリンパ節郭清)を併せておこないます。
化学療法
内服や点滴などにより全身に抗がん剤を作用させる全身抗がん剤治療です。
GC療法(ゲムシタビン+シスプラチンの2剤組み合わせ)
膀胱がんの治療に行われる化学療法です。GC療法が登場する前にはM-VAC療法(メソトレキセート+ビンブラスチン+ドキソルビシン+シスプラチンの4剤組み合わせ)をおこなっていました。GC療法とM-VAC療法では治療効果はほぼ同程度ですが副作用はM-VAC療法の方が強くGC療法がおこなわれるようになっています。2014年2月よりパクリタキセルとカルボプラチンの適応外使用が保険承認されたため、今後はGC療法以外の組み合わせによる治療がおこなわれる可能性があります。
副作用は吐き気・食欲不振・白血球減少・血小板減少・貧血・口内炎などが起きることがあります。
放射線治療(放射線治療の適応)
- 膀胱の摘出を望まない場合や高齢もしくは全身状態がよくないため膀胱の摘出や化学療法が困難・危険と判断される浸潤性の膀胱がん
- 骨転移などの痛みを和らげること
- 摘出ができない進行した膀胱がんからの出血を軽減すること
膀胱の摘出手術を望まない場合に放射線治療に化学療法を併せて治療し、膀胱を温存することを目指す場合があります。深達度がT3a以下で腫瘍経3cm以下などの場合によいとされています。
しかしこのような方法で膀胱を5年間温存できた可能性は6割以下であり、温存した膀胱に再度がんが発生するなどの危険性が高いです。
BCG(ウシ型弱毒結核菌)/抗がん剤膀胱内注入
- アントラサイクリン系抗がん剤を用いた膀注療法 …TURBTのみの群と比較して膀注療法群で有意に再発率が抑えられます。
- BCGを用いた膀注療法 …TURBT後のBCG膀注療法は高リスクがんに対して再発のみならず進展も抑制します。日本株を1回80mg2で週1回、6~8週投与します。
生活と療養
尿路変向術をされた方
人工膀胱に関するケア(ストーマケア)を専門とする外来で、皮膚や排泄のケアに関し専門的な知識と経験をもった看護師(皮膚・排泄ケア認定看護師)が相談に応じます。
治療後の経過観察と検査
TURBT後は、定期的に膀胱鏡検査や尿細胞診検査で再発の有無をチェックします。
初期治療後は通常3~4カ月後に膀胱鏡検査、尿細胞診検査をおこないます。その後はリスク別で検査の間隔が変わります。
膀胱を摘出した場合は、術後2年間は3~6カ月ごとに、その後は1年ごとに検査をおこない、転移が出現していないかなど定期的にチェックをします。
また回腸導管や腸管でつくられた新膀胱がきちんと機能しているか、腎障害が出てきていないかなどのチェックをおこないます。