消化器外科/下部消化管(小腸・大腸)
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大腸(結腸・直腸)について
小腸に続いて、右下から向かって時計回りにおなかの中を大きく回って、肛門にいたります。長さは個人差はありますが、およそ1.5mほどの臓器です。肛門から口側の20cmほどを直腸と言い、それ以外を結腸と呼びます。結腸は、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に分けられます。大腸には消化吸収作用はほとんどありません。水分の一部を吸収し、腸内細菌の働きなどで便を形成します。

大腸がんは、日本でも増加している病気です。部位別がん死亡数は、女性では1位、男性では2位となっています(2022年の調査)。日本人の死因の上位ですが、早期発見で治る可能性が高い病気です。

主な症状
血便、便秘や下痢の繰り返しなどの排便習慣の変化、体重減少、腹痛などが挙げられます。初期症状が軽いことも多いので、気になる症状があれば早めの受診をお勧めします。
大腸がんの原因(リスク)
遺伝性のがん以外のはっきりした原因はわかっていませんが、食生活(加工肉、高脂肪、低線維)、運動不足、家族歴などが危険因子といわれてています。

検査について
大腸がんを早期に発見するためには、定期的な検査が非常に重要です。一般的に以下のような検査をおこなっています。
便潜血検査
検査の内容 |
便に含まれる微量の血液を検出する簡単で体の負担が少ない検査です。この血液が、大腸がんやポリープなどの病変から出ている可能性があります。 |
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方法 |
自宅で専用キットを使用して便を採取し、提出していただきます。 |
利点と限界 | 負担が少ない、簡単に受けられる検査ですが、見落としの可能性があるため、気になる症状がある場合は他の検査をおすすめします。 進行がんの場合は80~90%検出できますが、早期がんやポリープでは50%程度しか検出できません。検診では有用とされていますが、早期発見を目的とするなら内視鏡検査が優れています。 |
大腸内視鏡検査
検査の内容 |
内視鏡を用いて、大腸全体の内部を直接観察する検査です。 |
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方法 | 検査前日から腸をきれいにするための準備が必要です。 当日は軽い鎮静剤を使用することで、痛みや不快感を軽減します。 |
特徴 |
高精度で病変を発見できる検査であり、早期発見に非常に効果的です。また、その場でポリープを切除することも可能です。 |
その他の検査
- 血液検査の一部の腫瘍マーカー(CEAやCA19-9など)を測定し補助的にがんの存在を判断します。
- 超音波検査、CT検査、MRI検査など:がんの広がりや転移の有無を調べます。
手術について
大腸がんの手術には、主に 開腹手術、腹腔鏡手術、そして ロボット支援手術の3つの方法があります。それぞれの特徴を簡単にご説明します。
開腹手術
メリット |
直接、患部を目で見て手術ができるため、複雑なケースにも対応しやすいです。 |
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デメリット |
お腹を大きめに切開するため、傷口が大きくなり、回復に少し時間がかかることがあります。 |
腹腔鏡手術
お腹に小さな穴を数カ所あけて、そこから細いカメラや器具を入れて手術をおこないます。
メリット |
傷口が小さく、体の負担が少ないと言われています。高精細なカメラで視野を拡大してみることができるため、繊細な手術が可能です。 |
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デメリット | 手術器具の操作には高度な技術が必要です。過去に腹部の手術を受けていたり、腹膜炎を起こしたことがある方では、癒着(腸管などが互いにくっついた状態)が高度な場合、かえって手術がやりにくいことがあります。 |

ロボット支援手術
腹腔鏡手術を進化させた方法で、ロボットのアームを使い、より繊細な手術が可能になります。
メリット |
ロボットの精密な操作により、狭い場所でも細かい作業が可能です。手術の精度が高く、身体への負担も少ないです。 |
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デメリット | 設備が必要なため、対応できる施設が限られます。がんの状態や癒着によりロボット手術が適さないことがあります。動脈瘤をお持ちの患者さんの場合も慎重に適応を検討します。 |
患者さんの病状や体調に応じて、最適な手術方法を医師がご提案いたします。

化学療法(抗がん剤治療)について
当院では、患者さんお一人おひとりの生活スタイルに寄り添い、最適な治療を提供することを大切にしています。特に、治療の中で「どのように安心して日常生活を送りながらがんと向き合うか」を重視し、患者さんに合わせた個別化治療を実践しています。
化学療法とは?
化学療法は、薬剤を使ってがん細胞を攻撃する治療法です。大腸がんの場合、治療の目的は以下の3つです。
1.再発を防ぐため 手術後に残っている可能性のある目に見えないがん細胞を排除します。 2.がんの進行を抑えるため がんが広がるスピードを遅らせ、日常生活を守ります。 3.症状を和らげるため 痛みや不快感を軽減し、より快適な生活を目指します。 |
化学療法は患者さんの体調や病状に合わせて計画されます。
当院の「個別化治療」
当院では、患者さん一人ひとりの状況や生活に寄り添い、最適な治療を提供することを目指しています。治療計画を立てる際、次のようなポイントを考慮しています。
- がんの進行度(ステージや転移の有無)
- 全身の健康状態(体力、持病の有無)
- ライフスタイル(通院の負担、ご家族の状況、お仕事や趣味)
患者さんとご家族と相談しながら治療方針を決めていきますので、どのようなご希望でもお気軽にご相談ください。
化学療法の方法
大腸がんに対する化学療法には、以下の治療方法があります。
- 点滴による治療
- 飲み薬による治療(経口化学療法)
- 点滴と飲み薬を組み合わせた方法
大腸がんの化学療法で使用できる薬剤とその組み合わせは、多岐にわたります。病状や遺伝子検査、患者背景を考慮して、患者さんと相談しながら決めていきます。
副作用への対応
化学療法には、吐き気、倦怠感、脱毛など、様々な副作用が出る場合があります。当院では、これらの副作用に対して以下のようなサポートをおこなっています。
- 薬剤の用量調節、投与タイミングの調整、場合によっては薬剤の変更
- 副作用を緩和する薬剤の使用
- 吐き気を抑える薬やセルフケアをご提案
- 栄養指導など
食事による体調管理のアドバイスを専門のスタッフがおこないます。
患者さんが安心して治療を受けられるよう、きめ細やかなサポート体制を整えています。大腸がんの治療は、患者さんの生活の質を維持しながら進めることが重要です。
放射線治療について
放射線治療とは?
放射線治療は、高エネルギーのX線などを使ってがん細胞を攻撃する治療法です。大腸がんのうち、主に直腸がんの治療で用いられ、以下のような場合に効果的です。
- 手術前:がんを縮小させ、手術をより安全におこなえるようにします。
- 症状の緩和:痛みや出血などの症状を和らげる目的で使用されることもあります。
- 手術が困難な部位へのアプローチ
以下のリンクより、「もっと知ってほしい大腸がんのこと」という、とてもわかりやすい冊子が無料で閲覧できます。一度、ご覧になられてはいかがでしょうか。
大腸癌研究会のホームページも役立つと思います。
連載「もっと詳しく大腸がん」
本コンテンツでは、より詳しく大腸がんについて知りたいという方にむけて、できるだけ詳しく、わかりやすく、大腸がんについて解説しています。
全部お伝えするためには量が膨大になるため、複数回に分けてご紹介いたします。