泌尿器科
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3)膀胱癌
膀胱は内側から粘膜層、筋層で構成され、外側には脂肪が存在しています。
膀胱癌の治療は、膀胱癌の進展度(筋層浸潤あり、なし)、転移の有無により変わります。
それぞれについて説明します。
1.転移のない場合
①筋層非浸潤性
膀胱癌が筋層に浸潤していない場合は、経尿道的に内視鏡切除が可能です(尿道から手術器具を入れて手術をするのでお腹を切るわけではありません)。手術は腰椎麻酔で行います。切除標本を病理学的に検討して、筋層に浸潤がなければ、治療は終了ですが膀胱癌は非常に再発しやすいため、5年間は定期的な膀胱鏡による観察が必要です。
近年、手術前に特殊な薬を服用することにより、手術中に腫瘍を発色させる技術が開発され臨床応用されています。当院でも採用されており、再発予防に貢献しています。(光線力学診断補助下経尿道的膀胱腫瘍切除術の項目参照)
また膀胱癌は悪性度により、再発の確率が変わりますので、悪性度が高い癌であった場合は、術後にBCG膀胱内注入療法を行い、再発しにくいようにします。
筋層非浸潤性癌のなかでも、上皮内癌と呼ばれる癌も存在します。この場合、病変は盛り上がっておらず、平坦な病変となっており、内視鏡的に切除することは困難です。この場合もBCG膀胱内注入療法を行います。それでも癌が消失しない場合は早期に膀胱全摘除術を行う必要があります。
②筋層浸潤性
膀胱癌が筋層に浸潤していた場合は、そのままでは転移する可能性が非常に高くなるため、
膀胱全摘除術を行う必要があります。ただし、癌が膀胱周囲脂肪や隣接臓器に浸潤している場合は、膀胱全摘を行う前に抗癌剤治療を行った後、効果があれば膀胱全摘除術を行います。
手術はロボット支援膀胱全摘除術を行っています。当院ではロボット支援手術を行う資格を持った医師が3名(玉田、呉、香山)、そのうち玉田は他の医師を指導できる資格(泌尿器内視鏡・ロボティクス学会プロクター)とロボット外科学会認定の国内A級ライセンスも取得しています。
手術時間は7時間程度、出血量は200ml程度で輸血を要することはほとんどありません。
おなかに操作用のポートを6つ開け(傷の大きさはカメラ挿入部が2cmで、他は1cm程度です)手術を行います。尿路変更の為に、腸管を切り出す操作に関しては、小切開(カメラ挿入部の傷を5㎝程度まで広げる)をおいて行います。
膀胱全摘を行うと、尿路の再建が必要となります。
尿路の再建には大きく分けて二つの方法があります。
【非失禁型】
回腸で膀胱のような袋を作成し、それに尿管、尿道を吻合し、従来通りに排尿できるようにする手術です。ストーマを必要としませんが、代用膀胱ですので、必ずしも自力で排尿できるとは限らず、自己導尿が必要となる場合もあります。癌が前立腺近くに浸潤していなければこの手術が可能です。
【失禁型】
回腸を20cmほど遊離して、それに尿管をつなげ、回腸末端を体外に出しストーマを形成する手術です(回腸導管)。尿は常に流れ出るためパウチと呼ばれる集尿袋を付ける必要があります。
回腸を用いず、尿管を直接体表に出してストーマとする尿管皮膚瘻という手術がありますが、尿管は脆弱であるため、尿管が狭窄する場合があり、回腸導管を作るリスクの高い高齢者や合併症を有する患者様に行われる手術です。
2.転移のある場合
すでに多臓器に転移がある場合は、根治的な手術は望めないため、薬物療法になります。
エンホルツマブとペムブロリズマブ、もしくはシスプラチンとジェムシタビンを用いた抗癌剤治療を3~4コース行い、治療効果を判定します。効果があれば免疫チェックポイント阻害薬(バベンチオ)による継続治療を行います。
シスプラチンとジェムシタビンによる効果が認められなければ、別の免疫チェックポイント阻害薬(キイトルーダ)による治療を行います。
それでも効果がなければ、エンホルツマブベドチンやタキサン系抗癌剤とジェムシタビンを用いた抗癌剤治療を行いますが、予後は依然として厳しいです。