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医学書 ブックレビュー

No.440

神経内科の外来診療(第3版)

北野邦孝  医学書院(定価3800円+税、2013年3月初版)

 副題の「医師と患者のクロストーク」の通り会話形式で進行する神経内科臨床のエッセンスを述べた一冊。 2000年が第1版、2008年が第2版で順調に版を伸ばしている神経内科関連では非専門職対象として評価の高い書籍としてよく引用されている。 なぜか、今まで一度もてにしたことがなく、今回が初見である。全18章で神経内科全般を網羅し、専門性の蘊蓄はコラムにしっかり詰め込み、 最近多くだされたガイドラインを取り入れるための新版と解説されているが、その通りに最新知見の入った本である。 ただ、今となっては会話形式のスタイルが逆に災いしている、冗長に感じられるように思われる。 会話を通してではなく、素直に著者の意見、感情を聞いてみたい気になってしまう。端的に言うとどうなのか、である。 患者の訴えは常に正しい」というDr. Houseとは真逆の表現でコミュニケーションを重んずる原点は理解できるのだが。 内容評価は 、 値段は 。 初版と序として平山惠造先生の寄せられている文章が、一番ストレートに読める。 泰斗だからというわけではないが、シンプルがやはり最適なのだろう。 専門医が総合診療系を意識した書籍を書かれると、逆説的に総合診療医が神経内科系の話題に触れるとき以上に特徴のないものになってしまうのであろうか。 300ページの本書を通読するのは、神経内科書をしてチェックするのに異論はないが、著者が目指しているような読み物としてはつらいかもしれない。お勧め度は、 とします。

July7.2013(N)

No.439

シリーズ生命倫理学(15)医学研究

シリーズ生命倫理学編集委員会 編  丸善出版(定価5800円+税、2012年11月初版)

 生命倫理を医療倫理と研究倫理の2つに大きく分けるという視点に立てば、この巻一冊で医学研究の倫理という研究倫理を扱っていることになる。 特殊な領域と言ってしまえばそれまでであるが、2大領域の片方をこの1巻で論じられており、逆に濃縮の書籍である。 歴史的背景、医療原則と指針(よく出てくるニュルンベルク綱領、ヘルシンキ宣言、ベルモントレポートなど)、倫理審査委員会、法、 インフォームドコンセント、バイアス、不正行為と発表倫理、利益相反、ヒトゲノム解析研究、トランスレーショナルリサーチ、ヒト試料、死体解剖と研究利用、 動物実験とテーマが並ぶと、ストレート勝負の一冊であるとすぐ解る。 内容評価は 、 値段は 。 巻頭で編者が述べているように、医学研究には患者(対象者)にとってよいことをなすという目的が必ずしも存在しない。 患者にとってよいことかどうかを明らかにする研究目的であることが多く、それどころか、患者の直接的利益は全く望めない研究もしばしば存在する。 では、どう考えるのかと、強い倫理的な介入が必要とされ、個人個人がそもそも考えておかないといけない命題の一つかもしれない。 執筆者一覧を見るだけでも、心に重くのしかかる。お勧め度は、 とします。

July6.2013(N)

No.438

シリーズ生命倫理学(20)生命倫理のフロンティア

シリーズ生命倫理学編集委員会 編  丸善出版(定価5800円+税、2013年1月初版)

 本シリーズの中で、本書は掉尾を飾る一冊である。とは言っても現時点で全巻刊行され完結していないが。 シリーズの構成としては、第1巻と第2巻で生命倫理の基礎的背景を提示し、第3巻から第19巻までで、個別具体的問題についての各論的色彩の強いテーマが並んでいる。 では、最終刊である本書第20巻では何を論じるかというと、生命倫理学の思想的、かつ哲学的な捉え直しを試みるという意味で、問題設定の視座が広く、 11の論点、論文から成立している。章立てを見ても、虚構、メタバイオエシックス、現代無常論、生存学、自然の権利、尊厳概念再考、欲望、未来など、 簡単には許してくれないような題が並ぶ。 内容評価は 、 値段は 。 個人的には、生命倫理学は医学医療のしもべか、の第4章と第11章で扱われている「生命倫理=医療倫理」か、が1番読み応えを感じた。 全体と読もうとすると結構歯ごたえがありすぎるが、疑問に思っているところだけを拾い読みするだけでも十分な巻であろう。 執筆者一覧を見るだけでも、心に重くのしかかる。お勧め度は、 とします。

July5.2013(N)

No.437

シリーズ生命倫理学(17)医療制度・医療政策・医療経済

シリーズ生命倫理学編集委員会 編  丸善出版(定価5800円+税、2013年2月初版)

 本シリーズの中で、1番違和感のある巻である。取り扱うテーマと生命倫理学との関係がどうか、と誰しものが思っていますひっかかりが存在する。 もちろん、この巻では、医療制度・医療政策の全貌を抽出し将来の社会設計に資することがミッションとされている。 資源の配分、効率性、公平性、質と安全、超高齢社会、財源確保といった重要課題に理論と制度の両面からだけでなく、 学際的にも多角的なアプローチをもって論じようとするものである。他には国際保健、各国の医療政策が紹介されている。 その上で、生命倫理の視座を底流に据え、医療システムの現状と持続性ある将来性について考えている気持ちが伝わってくるかというと、なかなかつらいものがある。 内容評価は 、 値段は 。 読み物として捉えてしまうこちらにも問題があるのかもしれないが、本シリーズの中で1番困った一冊である。 「生命倫理」がどこには見あたらない気がするからである。もちろん、他の巻と合わせて意味あると言われれば、黙るしかないのだが。 今中先生による第1章の医療の質を論ずる項など、個々に論文には読む、見る価値が高いのであるが、あくまでも全体としての意味である。お勧め度は、 とします。

July4.2013(N)

No.436

生命と人生の倫理

清水哲郎 伊坂青司  放送大学教育振興会(定価2300円+税、2005年3月初版)

 清水哲郎先生関連にて買い求めた一冊。放送大学の教材として書かれたもので8年前の出版である。 読む順番に関係していると思われるが、内容はほとんど他書で書かれている者が大変である。 執筆年度まで確認にしていないが、どちらがよりオリジナルかわからないが、清水先生がよく引用している書籍のため、買う結果となる。 もちろん生命倫理が200ページ弱で概観できるため、無用の一冊ではないが、あくまでも放送大学の教科書として理解しないと不満が残ってしまうかもしれない。 この手の教科書では必須の孫引き元として参考文献をかならずチェックするが、今回は余り大漁とは言い難かった。 清水先生は「医療現場に臨む哲学」の2冊、特に一冊目の驚きが強く、書かれた時期が少ししか離れていないためか、ダブってしまうのだろう。 内容評価は 、 値段は 。 清水先生の本を逆に一冊目と読むのなら、という質問であれば本書がある意味良いのかも知れない。 ただ、予備知識があれば購入する必要は・・・という一冊に思える。お勧め度は、 とします。

July3.2013(N)

No.435

慢性肝炎・肝硬変の診療ガイド2013

日本肝臓学会編  文光堂(定価1200円+税、2013年4月初版)

 日本肝臓学会の編集によるB型肝炎・C型肝炎・肝硬変診療の最新スタンダードを提供する一冊。オビに書かれた文字そのままの内容です。 60ページ余りの小冊子ですが、日常診療で必ず出会う疾患に対しての現在の立ち位置を知っておくには必須の書籍となります。 疾患の頻度や進行のパターン、治療の標準など、患者サイドに情報を提供する際には必須のアイテムが豊富に含まれています。 正直簡単に通読できますが、治療内容まではすぐにはアタマに入りません。 当方にとってHIVの勉強もそうでしたが、いくら学んでも実地で少しでも使わなければ結局はアタマに残らず何度も反復学習する羽目に陥るといった 悪循環になるのと同じ気がします。具体的な治療内容はザックリと理解しておき、大まかの知識で患者さんとまずは相対するのが良いのでしょう。 内容評価は 、 値段は 。 提供される情報量と手に入れ安さからすると日本糖尿病学会が発行しているものと双璧かもしれません。 こういったレベルが総合診療医も求められているとはっきり自覚できるから、ラクな反面きついと感じる。 そういった緊張感がある一冊です。お勧め度は、 とします。

July2.2013(N)

No.434

犯人は誰か?循環器臨床の推理の極意

香坂 俊 監修  羊土社(定価3800円+税、2013年4月初版)

 慶応の香坂先生が主催されるCADET(CArDiovascular Education Team)セミナーを一部書籍化したもの。 200ページ強の本ですが、中身が濃い割に読みやすい内容となっています。 中身が濃いといっても、循環器非専門医からの視点ですから、専門の方からは当たり前のものかもしれません。 福井の林先生が出されているStep Beyond Residentシリーズを循環器に特化したものというのが理解しやすいでしょう。 前線の若手が本気で議論しあう、そういった雰囲気を持ち、それでいて、総説としての内容をしっかりと提供する。 議論しあえるから学びになるのだ、という共通するコンセプトだと思います。 心電図、身体所見、ACS、失神、心不全などが本書で登場しますが、それ以上に香坂先生が目指すものに共感できるかが、本書より得られる最大の学びでしょう。 内容評価は 、 値段は 。 内容が非専門医としては、結構尖った部分の多い本であるため、結構刺激的です。 だからこそ読みたくなるのでしょうが、難点は会話形式で最後まで進行するため、通読する際に結構苦しくなる場面があることです。 内容とは別に、スタイルの決め方も読者の立場でも微妙なものです。ぜいたくばかり言ってそうで。お勧め度は、 とします。

July1.2013(N)

No.433

障害者総合支援法がよ〜くわかる本(第二版)

福祉行政法令研究会  秀和システム(定価1800円+税、2013年3月初版)

 新病院となり、地域包括ケアとどう向き合うかを考えている際に、ぶちあった疑問のひとつ。 実際は病院が提供する医療には余り関係がないと思い、全く放置していた部分であった。 今回、平成25年4月1日施行の障害者総合支援法と平成24年10月1日に施行された障害者虐待防止法についての説明を市の役所から受け、 自分なりに理解しておこうと購入した一冊である。以前存在した障害者自立支援法の延長上にあり、改善された内容と聞いていましたが、本書を通読しても理解しにくいものでした。 また、最近弁護士の不正としてよくマスコミに登場する成年後見制度についても概略が解りやすく出てきますが、スタイルがマニュアル本であるためか、 その意義付けが浅く、結局は別の書籍に当たる必要がありそうです。 内容評価は 、 値段は 。 医師として提供する医療に必要な情報でもなく、病院に勤務する上で必須でもなさそうです。 他の医師との会話のなかでもほとんど登場せず、別世界で使用される言語と錯覚しそうな用語ですが、紙一重ですり抜けている気がします。 一度立ち寄ってみる必要があるかもしれません。お勧め度は、 とします。

June30.2013(N)

No.432

シリーズ生命倫理学(12)先端医療

シリーズ生命倫理学編集委員会 編  丸善出版(定価5800円+税、2012年7月初版)

 先端医療とは、研究開発段階の医療で今後現場に検討されるような医療を指すのであろう。 ナノ医療、再生医療、脳科学が本書で中心となって扱われている先端医療である。 予想されたラインナップであるが、はるか未来ではなく、もうすぐそこにある医療と感じる方が多いではないだろうか。 自身の医療の立ち位置からは知識だけになってしまい、通読するのが精一杯というところである。 身近のことから患者さんからクレームをうけることが新病院となり多くなった身からは隔世の感のある一冊で、ある意味、リラックスして読めた。 内容評価は 、 値段は 。 医療サイドの倫理が主体でここまでシリーズが進んでいる気がするが、「患者」倫理なるものが存在しないのかと、ふと思っています。 モラル、道徳、倫理、呼び方は何でも良いのだが、日頃のクレーム対応をやっていると感じてしまうのである。お勧め度は、 とします。

June29.2013(N)

No.431

ワクチンと予防接種の全て(改訂第二版)

大谷 明 他  金原出版(定価4500円+税、2013年4月初版)

 日本で利用出来る、今後利用できるかもしれないワクチンについて概説された200ページ強の書籍です。 以前、ワクチン関連は一冊持っていれば長期間十分でしたが、最近は種類や考え方がどんどん変わっていくため、結構大変です。本書も4年で改訂されています。 以前の版を読んでいないため、変更点は不明です。今回通読すると概説とは言っても、著者の意見が結構散りばめられていて、面白く読めます。 そこまで書いていいの、と思ってしまうところが何カ所もあり、普通の医学書とは一線を画している気がします。 総論で、歴史、効果と役割、医薬品としての位置づけ、分類と成分、予防接種被害者救済について書かれており、後半が各論となっています。 内容評価は 、 値段は 。 ワクチンについては結構情報公開が進んでおり、アクセスもそれほど困難でないため、敢えて購入しないという選択肢もありますが、 情報源以外に読み物としても本書はお薦めできます。それにしても、本書巻頭でも触れられていますが、 予防接種自体が時代の流れでいろいろ翻弄されている気がします。お勧め度は、 とします。

June28.2013(N)

No.430

医療福祉をつなぐ関連職種連携

北島政樹 総編集  南江堂(定価3200円+税、2013年4月初版)

 国際医療福祉大学が平成11年より実施している関連職種連携教育(Interprofessional Education, IPE)の計13年間に渡る経験と実績から、 今後の講義と実習を行う上で基盤と成るべく編集されたテキストが本書である。 医療関連職が概観でき、相互関係がどのように繋がっていて、 仕事がどのように関連しオーバーラップしているかも良く解る内容で図表も多用されていて本当に参考になります。 ただ、医療本体には当然のことながら余り役立たないかも知れませんが。 家庭医療を視野に入れた総合診療機能を考えている方々には必要な情報がぎっしりと詰まって一冊です。 内容評価は 、 値段は 。 このように概観すると、本当に色んな職種から病院が成り立っていると再認識されます。 病院というものを紹介する図鑑のようなものと通読すると感じてしまいました。お勧め度は、 とします。

June27.2013(N)

No.429

シリーズ生命倫理学(14)看護倫理

シリーズ生命倫理学編集委員会 編  丸善出版(定価5800円+税、2012年7月初版)

 看護師が病院では最大集団でありながら「もの言わぬ」あるいは「言えぬ」集団から、近年の専門職意識の高まりの結果、自律性、主体性が確立してきた。 医療現場がイシを頂点とするピラミッド型のモデルではなく患者中心のチーム医療主体のモデルとなってくると、看護師も新たな倫理が必要とされてきている。 ただ、ケアが何かという問題はさせて通れず、通り一辺倒のナイチンゲール精神では不足なのかというと、逆に医師がヒポクラテスに精通しているわけでもなく、 さらに原典(点)に還るべきという主張も出てくるのである。通読してみても看護倫理が特殊な倫理を扱っている気はしない。 ケアのところは気になるが。個人的には第5章の「看護師—医師関係」の章が大変面白かった。 スタインのThe Doctor-Nurse Gameについて調査は古いが日本ではまだ現実かもしれないと感じる。一読の価値ありです。 内容評価は 、 値段は 。 ここまでシリーズも読んでくると、結構重複するテーマを別の著書で読むことができて、楽しい。 倫理もしっかり勉強してきたつもりであったが、圧倒的に知らないことが多いことに気付く。そのことが1番楽しいのかもしれない。お勧め度は、 とします。

June26.2013(N)

No.428

シリーズ生命倫理学(18)医療事故と医療人権侵害

シリーズ生命倫理学編集委員会 編  丸善出版(定価5800円+税、2012年7月初版)

 まずは内容であるが、医療事故とその対応から始まり、薬害、医療過誤訴訟、公害、臨床試験と人権侵害、各論としてのハンセン病、薬害エイズ、肝炎、 予防接種、産科医療補償制度、刑事責任、医療事故調査委員会となっていつものように300ページ弱で一冊が終わっている。 さすがに生命倫理の百科事典を目指しているというのが納得できる充実した一冊である。 ただ、個人的には内容以上に諸言で各巻の編集責任者の方々が熱く思いを語っているのが1番面白く読める気がする。 今回も、「・・・職業人として医療行為を行う医師としての職業的倫理観は医師になる前にすでに形成されているべきで、 医療行為をおこなうために医師に倫理観が必要なのではなく、そうでない者は医師となる資格はなく、また、医師になってはいけないと考える・・・」 という言葉は圧倒的で有る。 内容評価は 、 値段は 。 本シリーズも在庫が残り僅少らしい。普通に考えると個人で購入するようなシリーズではないだろう。 編者の言葉でないが、医師にとって倫理はいつもついてくる当たり前のような存在だが、理屈を求めるとこわい種類のものである気がする。お勧め度は、 とします。

June25.2013(N)

No.427

総合診療外来の問診ライブ

神田善伸・本村和久 編  文光堂(定価4500円+税、2013年3月初版)

 最近よく取り上げられるキイワードが2つ並んでいる。「総合診療」と「問診」である。このテーマで総論部分が20ページ、各論が23症例を使っての220ページある。 各論の症例部分はスタイルが統一されていて、症例毎に違和感にない作りになっている。 総合診療外来での問診をライブ形式で実際の会話形式にて詳細に書かれていて、臨場感があり、解りやすい内容である。総論部分は、多分本書のウリであろうが、 編者の臨床推論に対する熱い思いが伝わってくる。カーネマンの考えがベースになり、それを臨床医学に展開応用したように推察される。 ただ、残念なことに総論部分と各論部分のつながりが弱く、楊令提示の部分が、なぜこのスタイルで統一されたのかが理解しにくく、 折角の編者の気持ちが伝わりきっていない気がする。 内容評価は 、 値段は 。 もう少し総論の部分をふくらませてたっぷりと書かれても良かった気がする。各論部分も面白く読めるのだが、 時間軸というモノサシも持って問診のあり方を考えるという現実の話があっても良いのではと、田舎の自称総合診療医は思ってしまう。お勧め度は、 とします。

June24.2013(N)

No.426

シリーズ生命倫理学(13)臨床倫理

シリーズ生命倫理学編集委員会 編  丸善出版(定価5800円+税、2012年1月初版)

 臨床倫理がテーマであるが、シリーズの総括ではない。章立てをみても、臨床倫理の基礎と実践、倫理コンサルテーション、臨床倫理委員会、適法性、倫理的判断、 患者の意志決定能力・利益と無益性、家族の代行判断、事前指示とDNR、呼吸器尾取り外し、エホバの証人信者、最小意識状態患者の意志決定と、重いテーマが並ぶ。 最後に、医療専門職自身の悩みで終わっているのが、それを象徴している気がする。 個人的には倫理コンサルテーションのあり方や臨床倫理委員会の実際の運営方法についての記載が参考となった。 医療現場における比較的日常的な倫理問題と事例を通じて学ぶ上で、概観するには適した一冊と思われる。 内容評価は 、 値段は 。 アタマで考える生命倫理、医療倫理ではなく現場で使う倫理としては、何が必要で何をするのか、という疑問があれば、すぐに通読できます。 もちろん、こういった場合の理屈を求める方は、という条件は付きますが。これまでのシリーズの中で、1番気軽に読めた一冊でした。お勧め度は、 とします。

June23.2013(N)

No.425

TG13新基準掲載 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2013(第二版)

急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン改訂出版委員会  医学図書出版(定価4500円+税、2013年3月初版)

 2005年に国内版としてのガイドラインが刊行され、さらに国際版がいわゆるTokyo Guidelineとして2007年に発表。 その改定第二版が本書である。改訂の道筋とその理由が巻頭に明示され、すっきりした気持ちになれる。 理由もなく改訂が繰り返されるガイドラインが多く目につく中での話でクリーンかつフェアである。 Murphy徴候の感度が50-70%と低いことが再確認され、Charcotの三徴の診断感度が以前の報告以上に悲惨であり、26.4%しかないと明記されている。 理解しやすく、また現場ですぐに利用できるようなスタイルで一冊が貫かれ、しばらしいガイドラインとなっている。 多分、他のガイドラインの模範となるような出来ではないだろうか。 内容評価は 、 値段は 。 急性胆管炎、胆嚢炎を総合診療医が扱う頻度が高いから、というだけの理由でなく、書籍としてのガイドラインの有り様を考えるには、一読する価値があります。 いろんな意味で、本書を通読すると、他のガイドラインとは差異や相対的な位置関係が見えてくる気がしますが、どうでしょうか。 是非、手にとって通読してみて下さい。お勧め度は、 とします。

June22.2013(N)

No.424

シリーズ生命倫理学(19)医療倫理教育

シリーズ生命倫理学編集委員会 編  丸善出版(定価5800円+税、2012年7月初版)

 大変期待して読み始めた。しかし、読み終えると結構がっかりしました。内容に問題があるわけでなく、余りの標準的な教科書風に思えてしまったためです。 他の巻では、もちろんテーマは全く異なりますが、分担執筆者の思いが結構伝わって来ましたが、本巻はスタンダードを、 ある意味提示しようとし過ぎたために特徴の無い本となってしまった感が否めません。残念な気がします。 執筆陣を見ると、他の著書でもお目にかかるすごいメンバーですので、一人当たりの分量が少なかった結果かもしれませんが。 後半の部分の歯学、薬学、看護、介護福祉の教育における医療倫理についての考え方は他では余り読まなかった、読めなかったので、面白いものでした。 内容評価は 、 値段は 。 無責任にこういった書籍に書いたことがない人間が言うには問題だと自覚はしているのですが。 ただ、執筆されているかたを見ると、どうしても期待してしまう。標準的な見解ではなく、その人の持論をきいてみたいと。 本書も医療倫理教育のテキストしては高レベルかと思いますが、それ以上のことを期待したい方々ですね、と言う意味でご理解下さい。お勧め度は、 とします。

June21.2013(N)

No.423

重症新型インフルエンザ診断と治療の手引き

高病原性鳥インフルエンザの診断・治療に関する国際連携研究班  メディカル・サイエンス・インターナショナル(定価4600円+税、2013年3月初版)

 今年も新しい型のインフルエンザのニュースがマスコミをにぎわせています。備えあれば憂いなしで、準備に越したことはないのでしょう。 感染対策としての知識は必須でしょうが、一般的な知識としては必須と思われます。 ただ、治療は決定的なものがないように感じられ、単に知識としてのレベルかもしれません。 内容自体は、平成22年から24年の厚生労働省科学研究費補助金を受けている研究成果のため、以前より興味があって追いかけている方々には、 どこか既視感があり、余り新しい情報はないのでは、と思ってしまいます。 ただ、書籍として通読すると、物語りのようで圧倒されますが。 内容評価は 、 値段は 。 どうしても最新の情報が必須とされる領域が存在する、そういった気持ちさせる一冊です。 情報が氾濫している中で、しっかりとして立ち位置を確保しようとすると公的な機関が作成したガイドラインないし科研費関連の業績結果に依存するのは、 1番安全かもしれません。そういったことを再確認させる書籍でした。万人に向くかどうかは難しいとことですが。お勧め度は、 とします。

June20.2013(N)

No.422

シリーズ生命倫理学(8)高齢者・難病患者・障害者の医療福祉

シリーズ生命倫理学編集委員会 編  丸善出版(定価5800円+税、2012年12月初版)

 本シリーズの8冊目。だいぶ、へばってきました。これでもまだ半分にも到達していません。やはり通読する類のものではなかったのかなあ。 今回は高齢者、障害者、難病患者が取り上げられている。どちらかというと日本独自での論点が多く、他の巻が欧米等の理論に依っている部分が多いが、 医療福祉的な面が強いこれらの問題は、不幸にして(?)高齢化が世界で最も進んだ日本でしか余り目立たない論点かもしれない。 生命倫理として議論するには少し違和感があるのは、こういった理由かもしれない。理論というより実践という意味である。 内容も、倫理学というより福祉学関連の本を読んでいる錯覚に陥る。ベーシック・インカム理論などは最たるものであった。 内容評価は 、 値段は 。 難病患者や障害者について論点は以前より読まれた方、聞いた方は多いかと思う。 また、高齢者については虐待、認知症関連の問題として、難問が待ち受けている気がするであろう。そういった際の基本図書となるような一冊である。 でも、通読にはかなり精神力を要します。お勧め度は、 とします。

June19.2013(N)

No.421

発表が楽しくなる!研究者の劇的プレゼン術

堀口安彦  羊土社(定価2900円+税、2013年4月初版)

 これも最近よく出版されるようになったプレゼン関連の一冊かと思い入手し通読したが、驚いてしまった。著者の哲学が入ったすばらしい書籍であった。 哲学といってもそんなに高尚で難解なものではなく、すぐにでも現場で利用できるという実践哲学の方である。 口頭発表について、スライド論、ポスター論、プレゼンテーション自体の背景を著者の体験と実践から懇切丁寧に出し惜しみ無く解説されている。 スライド・ポスターの例示や校正も多く提示され、理解を促進している。あくまでも実戦から生まれたものであるのか、その理論の基盤となる理屈、 出典などはほとんど明示されていず、最後の参考書の箇所も直接的な書籍の紹介ではなかった。 主に有用なウェブサイトの案内であったが、それでも堪能できる一冊である。 内容評価は 、 値段は 。 この本を読むと実際にスライドやポスターを作成して学会で発表したくなる。 多分、こういった気分にさせるのは、著者の思う壺にはまっているのであろうが、気分の良いものである。 あとがきで1年かけて執筆したと書かれているが、本物の研究者はやはり違うのだなあ、と実感しました。お勧め度は、 とします。

June18.2013(N)



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