医学書 ブックレビュー
No.300
FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学
ノンバーバル・コミュニケーションを学ぶ一冊。3年前に出た単行本の文庫化。ヒトのしぐさを分析して感情や考えを見分ける方法が紹介されている。
顔、脚、足、手などのしぐさがどのような意味を持つかが、多数の写真で紹介されており、自分に当てはめると恐くなるくらい見透かされている気になる。
ヒトを判ろうとするときの武器にもなるし、逆に自分のことが透けて見えないように工夫する要点にもなる。
また、打ち解けた雰囲気作りにはどのようなしぐさが適切かも紹介されている。さすがFBI捜査官といったところか。
内容評価は
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値段は
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ウソを見抜く手段として利用することに対して慎重に対応するよう述べられている。これは、習うより慣れろという原則通りに、
子どものときからヒトはうそをうまく使っているため、見分けるのは困難だからである。いろんな意味で利用価値の高い本と思われる。お勧め度は、
とします。
Feb16.2013(N)
No.299
僕のこころを病名で呼ばないで
8年前に他社で単行本として出版されたものの文庫化であるが、著者は精神科の専門医であり、思春期外来から見えてくるものを書籍した内容です。
睡眠、人生、友人、疾病など広範囲のテーマを扱っていて、思春期向けの人生論と親向けのその解説書といった趣である。新型のうつ病など新しい概念がどんどん出てきている。
注目されている病気は、実はその社会がある必然性をもって浮かび上がらせた産物である。
時代の要請に応えるように、グレーゾーンに精神医学が病名をつけ治療することに、賛成できない。
精神科の領域が広がり肥大していくのを単純に良いこととは思えない、とする論調は本当に理解しやすいものである。
タイトルになっているが、診断というものは、患者本人の利益に繋がらなくては意味がないと、解説で触れられている。
内容評価は
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値段は
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思春期外来の精神科診療が中心ですが、一般論としての患者面接という側面をもつ本だと感じました。内容もそれほど精神疾患の偏ったものでありません。お勧め度は、
とします。
Feb15.2013(N)
No.298
誤解だらけの「発達障害」
発達障害と診断された子どもを持つ親は専門家から「しばらく様子をみましょう」とか「現状を受け入れてください」と言葉が投げかけられる。
では、「どう育てていけばいいのか」や「何をどのように教えていけばいいのか」などに答えはなく、暗中模索の状態となってします。
著者は、適切な教育で発達の遅れは大きく改善するとし、保護者が「知りたいこと」に答えようした一冊である。
実践的な話が詰まった新書であり、どちらかいうとマニュアル、実用書に近い。逆に言うと、その背景となる理屈は余り説明がなく、実例を通して有用さが解説されている。
発達障害というと、どうも小児科領域を思ってしまいますが、最近はアスペルガー症候群の成人版の解説書が出る時代ですから。
内容評価は
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値段は
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著者のこの領域での教育にかける熱意が伝わってくる一冊です。でも、もう少し理屈が欲しい気がしました。お勧め度は、
とします。
Feb14.2013(N)
No.297
大事なものは見えにくい
哲学者である鷲田先生のエッセイの一冊。4年前の単行本「嚙みきれない思い」の文庫化である。文庫本2,3ページの分量の掌編とも言えるエッセイが並ぶ。
この本を購入したのは第Ⅴ章の「患者様」という目次が目に付いたからである。「患者様」なのか「患者さん」なのかを著者の観点から論じていて大変面白い。
医療訴訟対策からの呼称ではないかという危惧。
また、サービスを受ける側、消費する側として患者が受動的になり、病院がますます管理側になるのではないかという不安が述べられている。
どちらかというと反対の立場らしいが、信頼できる医者であれば呼称なんかはどうでもいいである、と最後に締めくくっている。医療サイドとしても実感でしょう。
内容評価は
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値段は
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他にも、専門性ついてなど数点医療関係のエッセイがでてきますが、大半は通常のエッセイ集です。他の内容も面白く通読も容易です。お勧め度は、
とします。
Feb13.2013(N)
No.296
歴史から考える日本の危機管理は、ここが甘い
まずは以下のリストをご覧下さい。(1)議論をするな。印象を操作しろ。(2)とにかく繰り返し語れ。(3)物事を逆さに捉えろ。(4)壮大なスケールで語れ。
(5)思考停止のキーワードを作れ。(6)最悪でも両論併記に持ち込め。の七箇条です。いったい何のリストでしょうか。
「??????のテクニック」として著者が紹介しているものなのですが、これだけでは、でしょうか。
実は「情報操作による騙しのテクニック」として詳しく述べられているもとのリストです。
医療の危機管理の関係で購入したのですが、逆のここの部分でいつもの会議でやっていることが、上記のリストに大半当てはまっていてびっくりしました。皆さんは如何でしょうか。
内容評価は
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値段は
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簡単に通読できるのですが、論点が明確な上、著者の気持ちが熱すぎて主張の合わない方は結構ヘビーかもしれません。お勧め度は、
とします。
Feb12.2013(N)
No.295
医学生のための生命倫理
医学部で実際に生命倫理、医療倫理を講義として教えてきたベテランの教授陣が執筆された250ページ前後の標準テキスト。
全てを網羅するためにテーマ主義をとり、見開き2ページでワンテーマが原則のスタイルを取っており、読むための書籍というよりは辞書として用いた方が便利な内容となっている。
講義用に演習問題が付けられていて、まさに「標準」テキストである。
医学部における倫理水準を測る上では有用なモノサシを提供する書籍で、使い方によっては短時間で要点が解る様式のため便利である。
ただ、逆に通読して現時点での医療倫理のあり方を知ろうとする読み方には耐えないかもしれない。
内容評価は
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値段は
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薬学生、看護学生向けとシリーズで存在するらしいのですが、今は医学生がどんな倫理観を求められているか、思って購入しましたが、
読むとすぐいわゆる教科書であることが、良い意味悪い意味わかってしまい、若干戸惑ってしまいました。
内容は偏りがなく、レベルもそれほど低くなく、まさに「標準」です。お勧め度は、
とします。
Feb11.2013(N)
No.294
病棟の困ったを解決!マイナートラブル対処法
多分、横浜市立大学医学部関連の後期研修医の先生方が主力となり書かれた、いわゆるトラブルシューティング本の一冊。
監修は医学教育、臨床研修で高名な後藤英司先生です。通読してみると、病棟での問題が結構幅広く取り上げられており、テーマは本当に実践的なものばかりです。
やはり、現場の人間がナマの声で書いている、そういった書籍になっています。
逆にいうと、老練な医師がEBMにはない、経験に裏打ちされたTIPSを紹介しているようなマニア向けのものではなく、あくまでもオーソドックスな書き方になっています。
テーマ選定を含め、なぜがどこかで読んだ感覚をもってしまう一種物足りなさが残ってことも事実ですが、対象となる読み手の「すれっからし度」の問題でしょう。
内容評価は
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値段は
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引用文献の少なさがさらなる学習に繋がらない点が気になり、タイトルの「!」マークもどうかと思ってしまうのは年のせいでしょうか。
初期から後期研修医の先生が、勉強の成果を測る一種「モノサシ」として使用するには適した本かもしれません。お勧め度は、
とします。
Feb10.2013(N)
No.293
年報 医事法学27
日本医事法学会が編集した年報の2012年版。正直、存在自体が知らなかった書籍です。300ページ弱のペーパーバックですが、年一回の学会の報告集のスタイルようです。
医事法関連の世界の動向(中国、ドイツ、アメリカなど)が最初に紹介されています。
救急医療、チーム医療のワークショップにあとに、シンポジウムとして臨床研究が取り上げられ、総合討論が最後。これで全体の半分です。
残りで、判決紹介、文献紹介、医事法トピックス、法令解説が続きます。硬い文章ではなく、読み物としてしっかり読めます。
最後に2011年の医事法関係判決目録、文献目録がついており、1年を1冊に概観したいときにはうってつけと感じました。
医療訴訟関連では分厚い書籍が4巻まで出ており、詳細な解説も圧巻ですが、定期刊行物としてこの年刊も捨てたものでないと思われます。
以前に遡ってもう数冊読んでみる予定です。
内容評価は
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値段は
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医事法の動向を定期的にチェックできるすべがなく、困っていたときに見つけた一冊。
裁判所の判例をホームページで取ってきて、定期的に理解・確認するほどの自信はなく、当方の能力に適度な難易度の書籍でした。
医事法への興味もひとそれぞれですが。お勧め度は、
とします。
Feb9.2013(N)
No.292
密教
密教学の第一人者である松長先生の20年前の岩波新書の一冊。密教の書籍では、いまだに第一に取り上げられる本らしい。
世界遺産の高野山、特に密教のことが知りたくて購入した中の一つだが、もちろん内容もすごいのだけで、医療とは全く無関係で、
興味のあるオタク本のような感じになってしまいがち。著者のあとがきの言葉を紹介したくて取り上げます。
「お四国参りをしたときのことである。山頂のお寺に向かって、つづら折れの坂道を登る。
あそこが頂上だと思って、やっとたどりついても、角をまがるとそこからもっと急な坂が待ちかまえている。
目標に向かって続く距離と時間の果しなさを身にしみて感じながら、そのときインド人たちが輪廻をあれほど恐れている理由が、おぼろげながらわかるような気がした。」
内容評価は
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値段は
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今の仕事を考えると、身につまされる言葉でした。いつまでも「道なかば」なのでしょうか。お勧め度は、
とします。
Feb8.2013(N)
No.291
レンタルチャイルド
オビの「路上を彷徨う幼子は、やがて死体と売り捌く悪魔と変貌する」という文字に驚いて購入した一冊。
著者が10年前にインドのムンバイを訪れた際に路上の女乞食と赤ん坊が気になり、
実はマフィアの系列の乞食と一層の憐憫を誘うために手足を切断された「レンタルチャイルド」であったところから執筆が始まっている。
2年前の書籍の文庫化。正直、一冊通して暗い。当方には救いようのない暗さに感じる。現実だとは思ってもつらいものです。
著者は本文でも、あとがきでも、生きるという点で光明を見いだしていますが、当方には光は見えませんでした。
内容評価は
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値段は
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こういったルポルタージュが好きな方はうってつけの本なのかもしれません。
当方はどうも昔のTVである水戸黄門的予定調和が、居心地がよく、つらすぎる話には腰が引けてしまいます。現実ではありますが。お勧め度は、
とします。
Feb7.2013(N)
No.291
猫だましい
ねこが好きな方には申し訳ありません。嫌いではないのですが、とりたてて好きでもないのです。
こころの専門家の河合先生はねこが大好きで、古今東西の猫物語の中から12編を選んで紹介された一冊です。12年前に出版され10年前に文庫化されています。
簡単に通読できますが、楽しさが全く理解不能で、評価に向いていません。
また、医学にも全く関係なく、途方に暮れた一冊となりました。
内容評価は
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値段は
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評価不能のため、平均点としての★二つです。最近なぜか動物ものが多く、自分が悪いのですが、偏った性格かもしれません。お勧め度もあくまでも平均としての★として
とします。
Feb6.2013(N)
No.290
集中講義 織田信長
戦国大名研究の第一人者である著者の9年前の書籍。6年前に文庫化されている。日本で歴史上好きな人物ベストテンにまずは上位に顔を出す織田信長についての一冊。
いままでとは視点を変えて17の切り口で迫っているのが、他のいわゆる信長本との違いとしている。
信長本は、いろんな危機的な状況下で読まれてきたものであるが、リーダーシップや危機管理など都合の良い人物なのであろう。
17の視点も以前に読んだことある気がする上、当然視点は違っても扱う出来事が重複してくるため、複眼的視野とは成らず、逆にくどい感覚すら生じてしまう。
しかし、著者の信長への気持ちもしっかり伝わってくる書籍であり、歴史物が好きな方にはこたえられない本でしょう。
内容評価は
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値段は
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信長が戦国時代の後半に登場するのが、突然変異的な偶然なのか、これとも歴史の流れの中では必然なのか、という議論が一番楽しく読めた箇所です。
単純な生き方に見えて、実は複雑な人物である信長から得るものは個人個人違って来るのでしょうか。お勧め度は、
とします。
Feb5.2013(N)
No.289
営業をマネジメントする
医療関係、特に病院は営業とは無関係と一見思えるかもしれません。ただ、「営業とはお客さんとの関係をマネジメントすることだ」とすれば話は変わってきます。
これを二つの要素に分けるとさらに明確になってきます。ひとつはお客さんとの関係にあります。
取引相手を捜査の対象とするのではなく、すべて人を管理・操作するというヒト管理発想を捨て、コミュニケーションを重要視することによる関係管理発想に転換すること。
もう一つはマネジメントであり、予期して備える枠組みをしっかり作ること、だそうです。属人的営業から合理的組織中心の営業への転換を図ろうとする一冊です。
当然、お客さんを患者、営業を医療として読み替えてみると違うものが見えてくる気がします。
内容評価は
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値段は
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基は10年前の新書で、新たに今回文庫化されたものです。本質は変わらないということですか。
ただ、「営業」を営業として読んでしまうとつらい本に化けてしまいます。お勧め度は、
とします。
Feb4.2013(N)
No.288
「こころ」はどこで育つのか 発達障害を考える
児童精神科医で臨床心理学者である滝川先生のインタビュー集をまとめて新書化したもの。3部作らしいが他の2作は目を通せていない。
児童だけの問題ではない発達障害についての書籍であるが、タイトルとおり「こころ」を中心に論じている。
病院開放や早期退院と救急医療との関係、自己責任論と親の責任、児童虐待の現実、しつけと発達障害の関係、犯罪と性の問題など、
インタビュー集であることを最大限の利点としてうまく取り上げている。映像を見ているように頭の中に流れ込んでくるので通読は容易でしょう。
著者の持論である発達障害は異常ではなく、人間が持つ心の一つの表れである、という意味が分かってきます。
内容評価は
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値段は
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終わりに近い部分で中井久夫先生のことが出てきます。
精神科医でありながらの聴診を用いた診療風景やまずは患者を守り抜くという一貫した姿勢からの診療など、圧倒させられる内容でした。
一種の目から鱗が落ちる、といった感想になります。それだけでも一冊の価値があるかもしれません。お勧め度は、
とします。
Feb3.2013(N)
No.287
性の歴史Ⅲ 自己への配慮
これで「性の歴史」全3巻も読了です。個々に一応は独立しているため、各巻を間隔をおいて読んでも大丈夫のようです。
正直、本文を読んで自分の感覚で内容を把握、理解すべきなのでしょうが、どうしても、翻訳者、解説者、また別の書籍での本書への言及などを参考に読み進めてしまいます。
今回も、全3巻全体の流れを、行為、快楽、欲望の三極を中心に組み立て、古代ギリシャ、中国、キリスト教世界での違いを対比させる。
フーコーが核として述べたかった、集団としての道徳規範を基にした道徳哲学や道徳社会学ではなく自己実践を中心とする倫理的問題構成の歴史がそこにあるはずです。
本書を通読してもそこまで自力では到達できず、結局解説者のフーコーの道徳(モラル)の一要素である倫理を下位区分した四つの成文を聞いて、やっと判った気になりました。
内容評価は
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値段は
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フーコーの言いたい道徳、倫理のあり方を知りたくて結局は全3巻購入しました。
集団ではなく個別の倫理形成を、あるべき姿ではなく、現実なぜそうあるか、という疑問にはある程度答えられるでしょうが、
現場でのその意味づけは結構難しいかもしれません。お勧め度は、
とします。
Feb2.2013(N)
No.286
いつか罹る病気に備える本
全科に渡る領域を網羅して100の病気への不安を軽くするための基礎知識を提供する一冊。もとは週刊エコノミストに連載された「からだチェック」とのこと。
東京医科歯科大学関連の医師・歯科医師100人が執筆している。個々の内容は読んでいただくとして、1項目がおおまかに新書3ページ程度の分量であり、
一般向けの書籍のため、かなりかみ砕いた書き方にもなっている。
タイトルと「備える」が誤解を与えているかもしれないが、実際は予防中心の本でなく、一般の家庭医学書の新書版を想起されたい。
一般書である以上、難しく書くとなんだ、と言われ、簡単に書くと、内容がないと非難される、そういった対象になりやすい一冊でしょう。
内容評価は
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値段は
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医療関係者が読むことを多分想定していないでしょうし、読む必要もなさそうな本です。
ただ、一般の方の病気について知識レベルを知るには良いかもしれませんが、玉石混合のインターネット情報を主に調べてくる方が多い現在、
家庭医学書自体が絶滅危惧種なのかもしれません。お勧め度は、
とします。
Feb1.2013(N)
No.285
カントの人間学
本書はオビにある「散逸を肯定せよ。哲学者フーコーの出発を告げる幻の傑作、ついに刊行!」で一冊の内容が的確に表されている。
約30年前に亡くなったフーコーの博士請求論文の副論文として書かれたもののため、出版されて来なかったための「幻」であり、当然原点である。
そういった中に、以降のフーコーの方向性が全て入っているのではと、その萌芽を見るべく詳細な解説が為されている。
人びとが日常の営みの中で見せる散逸は、新たな有限性の自由の現れとして捉え、
この世間という世界の中で続けられる人びとの苦闘そのものが限界から踏み出しては絶えずその限界を引き直す限界の経験になる。
こういったことを、カントからニーチェへの道を通して、ハイデガーとの相反する解釈とともに論理が展開されている。
内容評価は
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値段は
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好きな方は好きなのでしょうが、簡単なことを敢えて難しく書いている感覚にとらわれる一冊でした。
人は変わっていかなければならない、そんなふうなメッセージとしてシンプルに理解したい書籍でした。多分そんな簡単な本ではないのでしょうが。お勧め度は、
とします。
Jan31.2013(N)
No.284
パーソナリティ障害とは何か
1970年代に日本で手首を切る若い女性が臨床現場に登場し始め、それが欧米でいう手首自傷症候群(リストカッティング・シンドローム)に当たると判断され、
1980年に出たアメリカ精神医学会によるDSM-Ⅲの疾患分類で境界性パーソナリティ障害として収載されることになった。
現実は、精神科医も救急医も最終の引き受け手のしての立場をどうするかで問題となった。
本書では、パーソナリティ障害とは、から始まり、各種のパーソナリティ障害、スキソイド、妄想性、サイクロイド、反社会性、境界性、自己愛性、会費制、強迫性、演技性などを、
実例を含めながら紹介している。新型うつの問題と合わせて、人格形成の幼さにも著者は目を向けている。
内容評価は
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値段は
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あとがきでも著者自らが述べているように、きめ細かく、門外漢にも理解できるように最大限努力が払われている労作である。
ただ、テーマ自体が重く、かつ難解である。かなり、読み手に精神力を要求する一冊である。お勧め度は、
とします。
Jan30.2013(N)
No.283
二重らせん
本当に有名な一冊。DNAの二重らせん構造が発見されてから60年、実際に本書の原著が刊行されて45年。
同年に日本語に翻訳されており、その約20年後の1986年に文庫化され、
今回が、ワトソン、クリック、ウィルキンスの三人のノーベル医学・生理学賞受賞から50年を記念して新書化されたもの。
三度目の正直ではないが、それこそ歴史を感じる。
類は友を呼ぶのか、登場人物も多彩であり、また、当然のことながら、他の領域を含め多数のノーベル賞受賞者が紹介されていることになる。
一番興味深いのは、34歳という若くしてノーベル賞を取った後の著者の生き方である。
その後は余り活発な論文作成がなされていず、後身の教育に主体をおいたり、ヒトゲノム・プロジェクトでの参画での天才振り発揮の紹介など、
本体よりは「その後」が面白い。これが、現実と。
内容評価は
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値段は
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もう、50年なのか、まだ50年なのか。
以前は基礎的な学問として生化学で難しく学んだ方々も多いと思われるが、当時のことは思い出したくないかもしれない。お勧め度は、
とします。
Jan29.2013(N)
No.282
家族依存のパラドクス
「家族依存症」の著者が公開の場でオープン・カウンセリングという手法を用いて導き出した家族問題への別の対処方法が紹介されている。
6年前の書籍の文庫化である。通常は患者に寄り添うことが主であるが、患者自身の症状という鎧の弱点を見つけ、そこを攻め、もっと有効な防御方法を教えて貰うべく、
鎧を脱がせてしまうという手段である。一種、著者独自の「ひねくれた治療者」としてのあり方だそうだが、一流の方は違うということかもしれない。
患者がある症状に依存して、そこから出るのを嫌がっていることに引導を渡してその症状から離れ去ることが主眼となる。
それなりの理由があって症状にへばりついているのだから抵抗される。この抵抗を排除するのは受容、共感よりはある種のことをしろ。という指示、強制が適切だと著者は説く。
内容評価は
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値段は
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相談の半分を占める引きこもりの実例を挙げたあとがきの一例が大変印象的。著者の原則が本当に生きている気がします。
やはり精神科医はすごいと感動しました。また、専門が違って良かったとも。お勧め度は、
とします。
Jan28.2013(N)
No.281
ドーミエ諷刺画の世界
ドーミエの諷刺画を今さら、という気持ちもあるが、なぜか思い出してしまった。
それは今年もノロウイルスが大流行という記事が多く目に付くからだ。毎年何らからの感染症、新型インフルエンザであったり、RSウイルスであったり、と流行は存在する。
その流行に対してみなさんの実感は如何であろうか。リアルなのか、という意味では。本書の中で、多くの諷刺画が取り上げられているが、医療関係はただの一枚である。
だから覚えていたのだが、1840年に出版された「絵入り医学のネメシス」という本の挿絵の一つである。
町中で死人が転がっている情景など、現在では考えたくものだが、これもある種文化かも知れない。ボードレールが絶賛するのも納得である。
内容評価は
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値段は
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違った角度でものを見るには良いかもしれません。ただ、医療関係で1項目ですが、他の政治風刺画ももちろん面白い。
約200年前のパリの姿ではありますが。お勧め度は、
とします。
Jan27.2013(N)