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医学書 ブックレビュー

No.200

「リスク」の食べ方

岩田健太郎  ちくま新書(定価780円+税、2012年10月初版)

 副題にある「食の安心と安全を考える」のために最近読み進めている安全と安心のテーマの一環として購入したわけでありません。 基本的に岩田先生の本を読んでおこうとする気持ちで購入しています。一般の方々がどの程度読まれているかは知らないのですが、 少なくとも研修医(初期ないし後期)の諸君で読まれている方が結構多く、実際「読みましたか」と話に出る機会もあります。 指導医クラスで数多く執筆されている方の考え方を知るために一種の「追っかけ」状態です。 本書では食のリスクについて書かれていますが、補完代替療法や食の安全を決定する機関のあり方など、多方面に渡って触れられています。 岩田先生らしく切れ味鋭く書かれていますが、冷静に見ると非常にオーソドックスなスタイルを踏襲され、論点も整理されている一冊です。 内容評価は 、 値段は 。 ボリューム的には書かれている内容と書きたい部分がアンバランスな気がしてします、いつもの岩田先生本です。お勧め度は、 とします。

Nov7.2012(N)

No.199

事故と心理—なぜ事故に好かれてしまうのか

吉田信彌  中公新書(定価820円+税、2006年8月初版)

 EB「安全」と「安心」について読み進めている際の一冊。どうしても交通事故関連の本が多く、今回のその分野の一冊。 印象としては医療安全関連としては余り参考にならないと感じた。 著者は専門が交通心理学であり、事故の原因を追及する際の手法や予防のために実地調査や心理試験を行い分析している。 ヒューマンエラーを認知科学・認知心理学としてとらえたラスムッセン、リーズン、ノーマンが紹介され、ノーマンのスリップ論に移る。 フロイトの精神分析が出てきて、どうなるかと思うと、ドレーク・丸山の動作本位反応説の紹介となる。 以降は詳細に副題に書かれたとおり、事故に好かれる人びとが描かれている。ただ、具体的であるため、医療には縁遠くなっている気がするのである。 内容評価は 、 値段は 。 終わりころに出てくる三隅二不二先生のリーダーシップ論が懐かしく、安全の本で読めたのにはいささか驚いた。お勧め度は、 とします。

Nov6.2012(N)

No.198

コウノメソッドでみる認知症診療

河野和彦  日本医事新報社(定価4600円+税、2012年10月初版)

 非常に面白い本である。認知症診療をこれだけ明解に解りやすく書かれた本は見たことがない。ある意味いろんな試験のときに使用される対策本の趣がある。 EBMのEがエビデンスではなくエキスペリエンスの意味で書かれ、首尾一貫している。年間1400人以上の診察経験から来た自信に満ちあふれている一冊。 学会、権威についてのあり方を批判し、理解されない診療方法を書籍やインターネットでオープンしている姿は一種の戦いである。同志を募り、これもネットで公開している。 以前の同僚が何人か同志であることにもびっくりした。内容も認知症診療をこれだけ簡略してもよいものかを感じてしまうくらいのメソッドであり、納得できるかどうか、 また、どの程度参考にするかどうかは当然読み手次第。 内容評価は 、 値段は 。 紙一重の領域で書かれた書籍。当初は楽しく読め、参考にしても良いかなと思ったが、結局は余り信じていないことに気付き、お勧め度は、 とします。

Nov5.2012(N)

No.197

安全と安心の科学

村上陽一郎  集英社新書(定価680円+税、2005年1月初版)

 新書はその時代の問題点を若干遅れて描き出すことが多い気がします。 単行本がまずトピックスとして登場しますが日数がかかり、文庫は通常オリジナル(今は時代小説の書き下ろしが多い)でなければ単行本発行から2年以上待ってからが原則です。 したがって時相の鏡はどうしても新書が担うことになり、今回の震災でも一番手に取りやすい状態だったと思います。 本書は8年近く前の新書で美浜原発の事故、台風が数多く上陸した年で新幹線の脱線事故が起こったときに出版されています。 それを震災の翌年に医療事故を含め再確認の意味で読むのは何か意味深いものを感じます。 予言書ではありませんが、何か普遍性を求めて読んでしまうのは著者の意図とは違うかもしれませんが。 タイトルとおりの今確認したくて読み込んでいる「安全」と「安心」に関連した一冊です。 内容評価は 、 値段は 。 サイバネティックスの部分は興味深く読めましたが、今ではほとんどどこかで聞いた、読んだ気になってしまう一冊でした。 とします。

Nov4.2012(N)

No.196

交通事故はなぜなくならないかーリスク行動の心理学

ジェラルド・J・S・ワイルド  新曜社(定価3500円+税、2007年2月初版)

 2001年発行の“Target Risk 2”(Gerald J.S. Wilde)の翻訳本。 原著の副題である”A New Psychology of Safety and Health. What works? What doesn’t? And Why…”が内容を的確に表している。 著者はカナダの大学関係者で交通心理学が専門。訳者は芳賀繁先生ですが、現代心理学の教授にて安全のヒューマンファクターに関する専門家です。 本書は当然のことながら、心理学説の一つであるリスク・ホメオスタシス理論を扱っている。 「どんなに進歩した安全装置をクルマに装備しても、どんなに道路を改良しても、どんなに交通違反の取り締まりを強化しても、事故率は変わらない」 という著者の主張があとがきにも紹介されている。よく誤解されていると翻訳者が投げているが、そういった実情は知りようもないが、誤解されやすい論点であることは理解できる。 内容評価は 、 値段は 。 安全と安心について調べているなかで、一つの視点として購入した一冊であるが、万人向けではないかもしれません。お勧め度は、 とします。

Nov3.2012(N)

No.195

人はなぜ逃げおくれるのかー災害の心理学

広瀬弘忠  集英社新書(定価700円+税、2004年4月初版)

 10年近く前の本で恐縮するのですが、(医療)安全と安心について確認したいことがあり、まとめて購入した中の一冊です。 安全を追求するのは「患者に害をなさない」という基本的スタンスからであるは当然ですが、訴訟等の防衛的発想からであることは事実でしょう。 しかし、本来のもうひとつの目的である患者サイドの「安心」はどうなっているかを余り勉強してこなかった自身に気がつき、手に入れた新書です。 東日本大震災前の書籍ですが、予言的な部分もある少し恐い本でした。 災害時の人間の行動パターンとしてよく取り上げられる正常性バイアスが最初に書かれており、特に地下街の火事の例が提示され、 当方が購入した目的はほぼ達せられました。 災害予知を含めた予防の話やボランティアのあり方など、今、読んでおくべき内容でしょう。 内容評価は 、 値段は 。 一般論としての災害対策を心理学的側面から多方面にわたって理解するには適した一冊かもしれません。 お勧め度は、 とします。

Nov2.2012(N)

No.194

これでわかるピロリ除菌療法と保険適用(改訂第4版)

高橋信一  南江堂(定価2500円+税、2012年10月初版)

 2001年から出版されているピロリ菌についての実務書の第4版。大抵の医師はいずれか以前の版を購入されているかと思います。当方は初めてです。 日常診療にて除菌療法や検査については医師間の差異はほとんどないかと思うのですが、 除菌療法の適応や検診等にてなぜこの検査を実施するのかがよくわからないことが多く保険適用の実際を知りたくて手にとりました。 最新のガイドラインに準拠されており、内容も専門外のものにも理解しやすいスタイルとなっています。 検診やドックで検査されピロリ菌が体内に存在する結果が出て、病院に来られ除菌の適応について押し問答となる。 前医は責められない。建前の上では適用できない。でも、面倒だから病名を付けて除菌療法を行う。結局、この点についてはやはりダメであると理解できた一冊です。 内容評価は 、 値段は 。 大抵の医師はすでに知っている内容でしょうから、読んでももの足らないかもしれません。確認したいという書籍になるかもしれません。 お勧め度は、 とします。

Nov1.2012(N)

No.193

この方法で生きのびろ!旅先サバイバル篇

ジョシュア・ペイビン他  草思社文庫(定価700円+税、2012年10月初版)

 11年前のサバイバルブック文庫化第二弾。前回が総論で今回が旅先篇である。 飛行機が墜落する際の対応やテロに遭遇したときのことがある意味まじめに記載、解説されている。 お遊びでUFOに会ったときの具体的な話は笑えます。ビル、火事などのいろんな状況下での脱出方法についてもふれられています。 実際はどの程度冷静に対応できるかがすべてのようですが。 医療としてはタランチュラ、サソリ、ピラニア、吸血ヒル、手足切断についての緊急対応について一章を割き説明されています。 どちらにしても対応可能を目指すより、会わない方がと、誰しもが思い、最終章に予防、回避手段についても触れられています。 内容評価は 、 値段は 。 書籍というより雑誌、ムックのような感覚で拾い読みしてしまうたぐいの一冊です。気楽に読めるかで、価値が決まってしまう本と思われます。 お勧め度は、 とします。

Oct31.2012(N)

No.192

良心をもたない人たち

マーサ・スタウト  草思社文庫(定価760円+税、2012年10月初版)

 6年前のハードカバーの文庫化。 出版社が倒産するのは本が絶版になるのを恐れるが、このように結果として書籍が文庫化して手に入りやすくなったりするのもチャンスかも知れない。 25人に1人いるとされる「良心のない人間」の見分け方と対処法が書かれている。 実際はソシオパス、ないしサイコパスと言われている実例を多く紹介し、理解しやすいスタイルとなっている。 対処としては「世の中には文字通り良心のない人たちもいるという、苦い薬を飲むこと」から始まる13のルールが参考になる。 ただ、この本の真価は翻訳者があとがきにて指摘しているように「良心のなさ」を通じて「良心とは何か」を問いかけているところにある。 答えは各人が出すべきであろうが、一つの回答として著者は「愛にもとづく義務感」としている。 内容評価は 、 値段は 。 読み通しても、どうも「良心」という言葉自体が日本人向きではないような気がしてしまう。個人的には「良心がない」と言われそうですが、そんな一冊です。 お勧め度は、 とします。

Oct30.2012(N)

No.191

BARレモン・ハート(23)

古谷三敏  双葉文庫(定価524円+税、2011年9月初版)

 昭和60年から連載が開始されたロングセラーコミックの一冊。実際に医者になって数年、しばらくしてから友人に勧められ最初の数冊を購入した記憶がある。 書店で昨年出た文庫版のコミックを見つけ手に取る。収録されているコミック自体の初出は今から6年前。 多分通常のコミックサイズでも出ているのだろうが、恥ずかしくてコミック売り場には行けそうにない。絵柄も懐かしく描き方も全く変わっていない。 同じ著者の「寄席芸人伝」も思い出す。話は通しのナンバリングがされており、今回は294話からで本当に歴史を感じてしまう。内容はタイトルの通り。 お酒に興味の有る方は知っているでしょうし、知らない方は是非一度お試しを。 内容評価は 、 値段は 。 今回の一話は298話の「予期せぬ掘り出し物」。偶然を成功に結びつける能力という意味のアードベッグ・セレンディビティが登場。いつも蘊蓄が語られている。 単なる酒飲みかもしれませんが、 お勧め度は、 とします。

Oct29.2012(N)

No.190

“知りたい”めまい“知っておきたい”めまい薬物療法

肥塚 泉 編  全日本病院出版会(定価4500円+税、2012年10月初版)

 救急、総合診療の現場で立ちはだかる壁の一つである眩暈についての書籍。 どちらかというと網羅的に編集されたものではなく、臨床の現場に即して強弱をつけて記載を目指した一冊。 どうしても共著であるため、重複と立場の差異から同じ疾患、治療法についてもニュアンスの違いを感じる箇所が結構目に付く。 でも、逆に言うと専門性の違いから見え方、理解の仕方が違うという意味であり、面白い点かもしれない。 定番の寺澤先生のERでのめまいから始まり、総論を経て、初期診療のエッセンスが小児科を含めた各科から記載され、最後に関連全科からの薬物治療の紹介となっている。 全部で170ページ程度の本で読みやすいのであるが、各論が結局は三分の二以上を占め、救急や総合診療に興味があってめまいと闘うために購入するには難がある。 評価の分かれる一冊でしょう。 内容評価は 、 値段は 。 ちなみに個人的には楽しく読めたのは全体で30ページ弱のボリュームで、個々の先生方の特徴が出きっていない気がする共著によくある不完全燃焼の医学書でした。 お勧め度は、 とします。

Oct28.2012(N)

No.189

高脂血症 診療ガイド 第二版

村勢敏郎  文光堂(定価2800円+税、2012年9月初版)

 2005年に初版が発行されたものの改訂版。単独の著書であることが特筆される。「改訂にあたって」として明解に改訂の箇所を列記されている点がすばらしい。 そして読後の感想もほぼ同じ点での評価対象となっている。始めに登場する「目で見る高脂血症」は綺麗な写真で理解しやすく、やはりビジュアルに勝る者はない。 治療関連では、高コレステロール血症についての吸収阻害剤エゼチミブと低HDLコレステロール血症についてのCETP阻害剤についての考えが詳述されている。 他にも低コレステロール血症、家族性高コレステロール血症についても最新の知見を交え記述されている。 著者の経験と気持ちが伝わるような内容であり、本当に読みやすく理解しやすい一冊となっている。 いつもガイドライン風の書籍を読むことが多くなってしまった現在で、単著のこのような一冊は一種オアシスのように感じられる。 内容評価は 、 値段は 。 コモンディジーズであり必須の勉強項目ですが、理解しやすさの点では最高でした。 お勧め度は、 とします。

Oct27.2012(N)

No.188

介護ヘルパーは見た

藤原るか  幻冬舎新書(定価780円+税、2012年9月初版)

 介護ヘルパーとして20年以上のキャリアがある著者がその実態と実際を新書して著した一冊。 副題の「世にも奇妙な爆笑!老後の事例集」は、余り内容に即していず、いわゆる売り文句でしょう。この副題で一旦は購入を止めようとしたがが、しっかりした内容である。 全8章の内、6章が事例集からなり、それなりに参考とはなるが、医療関係者なら想定範囲の事柄で、残りの2章が目玉。 「介護保険制度をうまく利用するコツ」と「ヘルパーが見た介護業界の現実」がそれであるが、現場で初めて解るコツと問題点が取り上げられている。 介護保険の申請のノウハウ、入居時に必要となる金額が介護の質と必ずしも比例していず、どう見抜くかの問題、介護関連の賃金の低さの問題などが淡々と述べられている。 内容評価は 、 値段は 。 面白いのですが、期待されるボリュームとしては半分以下でもよいのでは、と思い少し辛口の評価ですが、介護に興味の有る方には損はないでしょう。 お勧め度は、 とします。

Oct26.2012(N)

No.187

エゴイスト入門

中島義道  新潮文庫(定価438円+税、2010年6月初版)

 大学教授であり、哲学者である中島先生が書かれた数多いエッセイのひとつ。 本職である哲学の本も最近講談社学術文庫で再刊されており一筋縄でいかないが、気楽に読めるはずの本書でも考え込むことが度々ある一冊でした。 タイトルにもなっている「日本型江越スト」の項はまさにその部分です。 欲望個人主義vsウルトラ欲望主義、日本型個人主義vs西洋型個人主義、強い個人主義vs弱い個人主義などの対比を通して現在の生き方を分析している。 特に「弱い個人主義」としての特徴を(1)利益の追求ではなく、不利益の回避を重視(2)他人との関係において防衛的で競争回避的 (3)個人としてでなく集団として所属し、その集団を通して市場ゲームのプレイヤーとなる、の3点をあげている。 どうも周囲に大勢いる気がしてしまいます。 内容評価は 、 値段は 。 エッセイは音楽鑑賞と同じく好みが主体でしょう。合えば良いのですが。 お勧め度は、 とします。

Oct25.2012(N)

No.186

言葉の力、生きる力

柳田邦男  新潮文庫(定価438円+税、2005年7月初版)

 10年前に発行された単行本が文庫化されたもので、それでも7年前のものとなる一冊。 むすこさんを自死にて亡くされてからの書籍のため、緩和医療、脳死など最近の柳田さんの一連のテーマが取り上げられているが、 エッセイ風のためその印象はいつもよりは薄くなっている気がする。プロローグの後で、心を耕してくれる名文句から始まる。 以降も言葉を通して「生きる」、「いのち」、「息づかい」、「医療」と続いていく。なかでも写真家の星野道夫さんの作品を通して、 「事実であれば、あるいは面白ければ、プライバシーでも何でも書いてしまう統制のジャーナリズム」への気持ちが答えとして示されており、胸にくるものがある。 内容評価は 、 値段は 。 最初に著者が記している、「はじめに言葉があった。・・・言葉の危機は、心の危機であり文化の危機だ。」と詰め寄られるとドキッとしています。 お勧め度は、 とします。

Oct24.2012(N)

No.185

事故がなくならない理由

芳賀繁  PHP新書(定価740円+税、2012年10月初版)

 自動車安全工学を中心に検討されてきたリスク・ホメオスターシス理論をたばこ被害、山岳遭難や津波対策まで範囲を広げ検討した新書の一冊。 この理論は心理学説の一つで、「工学的対策では事故率を減らすことはできない」というワイルドの主張に基づいている。 工学的な安全対策は人間の行動や技能訓練に変化をもたらす。 このため、安全に対するモチベーションが不十分な人にそれを与えると安全性が向上せずに、効率性や快適性を高める目的に転用され、 結果、人間の行動がリスクを高める方向に変化する場合があることを示している。 結果的に、安全対策が本来企図した安全対策として効率が発揮されないという皮肉な結末を迎える。 リスク補償行動、リスク認知と判断、正常性バイアス、リスク。コミュニケーション、スレット・アンド・エラー・マネジメントなど興味深い言葉が並ぶ。 内容評価は 、 値段は 。 いろんな角度から医療安全を勉強するにはうってつけの一冊。この方面に興味のある方は参考になる部分が見つかると思います。 お勧め度は、 とします。

Oct23.2012(N)

No.184

最後の授業

ランディ・パウシュ  武田ランダムハウスジャパン(定価750円+税、2012年9月初版)

 4年間に出版された同名書籍の文庫化。米国のバーチャルリアリティ専門家である大学教授が突然膵癌の末期と診断され、それ以降の日々を自身が綴ったもの。 周囲にも膵癌にて将来と嘱望されていて亡くなった方や折角希望した身分を勝ち得ながら、それを活用出来ずに去っていった方など、身につまされるものがあります。 文字通りに人生最後の講義で、夢を実現すること、人生を楽しむこと、家族や大切な人びとたちを愛して愛されることをテーマとして行われています。 状況は、ある意味悲惨なのに、一種楽観的な見解で進んでいく部分はアメリカ的かもしれません。 内容評価は 、 値段は 。 この手の話は人を選ぶものだと思います。いつもこういった書籍も購入すると自分は読み手して向いているのか、と自問してしまいます。 正直、今回も余り向いていなかったようです。 お勧め度は、 とします。

Oct22.2012(N)

No.183

こころの声を聴く

河合隼雄  新潮文庫(定価476円+税、1998年1月初版)

 今さらながら河合先生の本をときどき求めて購入しゆっくり読んでいます。精神分析の本も多いのですが、エッセイは読んでいてスローペースになれます。 古い本で恐縮するのですが、今回は対話集です。遠藤周作さん、安部公房さんなど亡くなった方の名前が並ぶのは著者自身も存命されていないのですから当然かもしれません。 紹介されている十人の対話の中で、一番心に残ったのは沢村貞子さんとのものです。タイトルのこころの声ではなく、身体の声を聴け、という部分です。 外の声が聞こえ過ぎる現在で自分の内なる声を聞く必要性が取り上げられています。 内容評価は 、 値段は 。 プロフェッショナルの方々の考え方、感じ方はいつでも、何か学びに繋がります。 そう感じていれば良く、あえて、学ぶ必要がないのかもしれませんが。 お勧め度は、 とします。

Oct21.2012(N)

No.182

咳が気になる人が読む本

加藤治文、福島茂  講談社ブルーバックス(定価800円+税、2012年9月初版)

 東京医大でいわば日本の肺癌のトップでおられた先生が咳から症状を解きほぐし、肺癌、禁煙について解説したブルーバックスの一冊。 咳のメカニズムから始まり、実際に咳がおこる風邪、インフルエンザ、肺炎、結核、胸痛を起こす疾患を取り上げ、 さらに呼吸困難を誘起する喘息や喫煙に関連するCOPDに触れ、最後に肺癌について述べられている。 通してみても少なくても「咳」だけの書籍でなく、また、共著であるが、分担が全く不明だった。 その上、この本の成り立ちから意味づけが当方には理解できなかった。別に無くてもよいのかもしれないが。 内容評価は 、 値段は 。 咳という症状に興味があって購入したが、正直期待外れでした。 対象とされた読み手が違ったのでしょう。当方も勝手な思い込みで、落胆も当方の責任ということで。 お勧め度は、 とします。

Oct20.2012(N)

No.181

心エコーハンドブック別巻 心臓聴診エッセンシャルズ

坂本二哉  金芳堂(定価3800円+税、2012年9月初版)

 ときどき初心に返るべく、理学所見の勉強をします。神学的所見や聴診などがそれに当たるのですが、今回は心音を学ぶために購入。 てっきりCDないしDVDが付いているものと思い込んで購入しましたが書籍本体のみです。しかし実際に「音」が付随していなくともすばらしい一冊でした。 もちろん当方、非循環器専門医ですのでビギナーとしての感想ですが。 全体で150ページ弱の本ですが、歴史からはじまり、基礎知識に移り、心音、心雑音の総論・各論に進んでいきます。 筆者の単著であることが最大に活かされており、首尾一貫した意見が聞けます。 また、著者自身の経験が生きた形で提供され、本質と突いた理論が展開され、胸がすく気持ちと成ります。 内容評価は 、 値段は 。 この手の本は読んだからといって、現実の臨床には活かしにくく、自分に幻滅する結果とならないように気をつけることになります。 文中で紹介されているJames V. Warrenの“The most important part of the stethoscope is in between the two ear pieces.”を忘れずに。 お勧め度は、 とします。

Oct19.2012(N)



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