私たちはさまざまな道具を使って生活しています。
障がいを補うために福祉用具を使用すると考えられていますが、その人にとって生活の必需品となれば、生活用具といえるでしょう。福祉用具は、失われた身体機能を補い、できないことをできるようにしたり、やりやすくしたり、転倒などの事故を防止し安全を確保します。
また、介護者の労力を軽減し、腰痛や疲労から身を守ります。
現在、多くの福祉用具が市販されていますが、それぞれにできることは限定されています。
本人の能力、介護者の能力、住環境、社会環境がある特定の条件化で効果を発揮します。
万能な福祉用具や誰にでも合う福祉用具はありません。
しかし、上手に福祉用具が導入されれば、具体的にその効果が日常生活の中で見えることでしょう。そして、状況は絶えず変化しますので、その変化に応じて、その時々に適切な福祉用具を導入しましょう。
では、いくつかの例について述べてみましょう。
排泄がトイレで出来ないということは、本人にとっては自尊心や生きる張り合いを失うことにつながります。
トイレから立ち上がりにくい原因は沢山考えられると思いますが、いくつか考えられる解決方法を紹介します。
自宅のお風呂に入れることは、精神的にも身体機能にもさまざまなよい効果があります。単に身体を清潔にするためだけでなく、食欲の増進や安眠にも効果があります。
入浴はちょっとした改造や工夫で大変便利になりますが、その多くは実際に入浴場面を見て、さまざまな要素を多方面から評価しなければなりません。
以下に示すのは、そのうちの一例にしかすぎません。入浴動作を含む身体機能と住環境を正しく評価し、解決手段を見つけるためには、作業療法士や理学療法士、担当のケアマネージャーに相談してみて下さい。
■ 浴槽への出入りが難しい
立って跨ぐことができる場合は、浴室の壁に手すりを設置したり、浴槽の縁に挟み込んで固定するタイプの手すりを使用することで、動作の安全性を高めることができます。
立って跨ぐことが難しい場合は、バスボードなどを利用し座った状態で浴槽の縁を跨ぎましょう。
■ 浴槽での立ち座りが難しい
手すりを設置したり、浴槽内に滑り止めをつけたり、浴槽内台を置いたりすることで、楽に行える場合があります。
■ 浴槽への出入りや浴槽での立ち座りがほとんど自分で行えない
浴槽内昇降機を設置したり、ホイスト(天井から吊り下げて運ぶ機器)を設置したりすると介助量が軽減できます。
■ 体を洗う時、シャワーを浴びる時
身体を洗う時やシャワーを浴びる時に使用する浴室用の椅子は、量販店などで一般に市販されているものであれば高さ20~30cm程度です。座面の高さが低く、また座面が狭いため、椅子から立ち上がりにくい、座る時に転倒の危険がある、といった問題が生じる場合があります。シャワーチェアを使用することで楽に、そして安全に動作を行う事ができます。シャワーチェアは高さ調節が可能なものが多いので、使用する方の動作しやすい高さに合わせて設定することができます。
また、製品によって、肘かけが付いているもの、背もたれが付いているもの、座面が回転するものなどがありますので、使用する方の身体の状態、動きの状態に合わせて選ぶことが必要です。
歩くということは、骨や筋肉の衰えを防ぎ自立への意欲の向上につながりますが、転倒による骨折など危険性の高い動作でもあります。そこで歩く能力を十分に理解し、適切な用具を選択することが必要になります。
■ 杖
利き手あるいは痛みのある場合には健側(痛みのない側)につくのが一般的です。
■ 歩行器
杖と比較して体重をより多くかけることができ、より安定した歩行を補助します。敷居や段差の解消、回転スペースが必要です。