ここでは脳卒中や事故などによる頭部外傷などにより脳の機能に障がいが
生じた場合の症状や問題について説明します。
脳卒中は、人それぞれに異なった機序で発生するため、脳のどの部分が、どんな原因によって障がいされたかによって、症状も様々です。代表的な症状を挙げましょう。
■ 意識障がい
■ 運動麻痺
■ 運動失調
■ 感覚障がい
■ 言語障がい
■ 視野の障がい
■ 記憶障がい
■ 高次脳機能障がい
※ 頭痛やめまいや立ちくらみが起こることがあり、立てなかったり、歩いていてもフラフラするようになります。
急性期のリハビリテーション
麻痺によって、動きが悪くなった手足を放置することで関節が固くなる(拘縮)ような二次的な障がいを、まずは予防することです。二次的な障がいには、筋力低下、床ずれ、起立性低血圧などがあります。そこで必要となるのが、体位変換、四肢の関節を良い位置に保持すること、関節可動域訓練(拘縮予防のための他動的運動)などです。
そして患者さんの状態に合わせ、障がいされた機能が少しでも回復するよう訓練していくとともに、今使える機能を活用し、日常生活をできるだけ自分で行えるように練習します。そのため、食事・更衣・排泄などの日常生活動作について、その人にあった適切なやり方・介助方法を指導していきます。
回復期のリハビリテーション
急性期リハビリテーションに引き続いて行われるのが「回復期のリハビリテーション」です。
この回復期といわれる時期に集中的なリハビリテーション訓練を行うことが最も効果的です。後遺症の程度やその回復具合など個人差を踏まえて、後遺症が残るとしても、少しでも日常生活ができるように、それぞれの患者さんに合わせた訓練が行われます。 患者さんのより充実した社会・家庭復帰を実現するために患者さんごとのリハビリテーション(リハビリ)プログラムに基づき、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカー、薬剤師、管理栄養士等が共同で集中的なリハビリテーション(リハビリ)を提供いたします。
慢性期のリハビリテーション
残された機能を最大限活用し、身辺動作や家事動作、仕事への復帰を目指して、患者さんの障がいの程度に見合った適切な訓練を行います。日常生活を少しでも快適に過ごせるようにするために、電気治療や温熱治療を行ったり、適切な装具や杖などの使用、住宅改修などの環境整備も有効です。
専門の言語聴覚士が “ことばの障がい(例:言いたいことばが出ない、呂律が回らない)” がある患者さんに対して、現在どの部分に問題があるのかを検査して調べ、残された能力を最大限に引き出せるよう訓練をし、御家族にことばの障がいについて説明したりしています。
大きく分けて、失語症と運動障がい性構音障がいとがあります。
■ 失語症とは?
失語症とは、脳の“ことば”を司る場所が損傷を受けたことで、今まで何不自由なくことばを使っていた人が、ことばを操れなくなった状態を言います。
失語症になると、言葉を話すだけでなく、人が話していることばの内容を理解したり、文字を読んだり、書いたりすることが不自由になります。計算も難しくなります。
これは、声を出したり話をしたりする時に使う筋肉や器官の障がいではありませんし、耳が聞こえなくなったり、目が見えなくなってしまったことによるものでもありません。“ことば”を操作する言語機能の障がいによるものです。
失語症には大きく分けてブローカ失語とウェルニッケ失語とがあります。
■ 運動障がい性構音障がいとは?
運動障がい性構音障がいとは、声を出したり話をしたりする時に使う筋肉・器官に麻痺や筋力低下、失調などが出るために、歯切れよくしゃべることができなくなる状態のことを言います。いわゆる“呂律がまわらない”状態です。
言語機能そのものには問題がありませんので、考えている事柄を言葉に変えたり、聴いて理解することには障がいはありません。
ですので筆談や、50音表を用いてのコミュニケーションが可能です。
聴いて理解する能力は比較的良いですが、話す時は努力を要し、たどたどしく、音が歪んだり(失構音や発語失行)、他の音に置き代わってしまったりします(音韻性錯語:例.とけい→とでい)。
話をする量は少なく、単語や決まり文句だけが言えるだけなど、短い話し方になります。言いたい言葉が出てこなくなる喚語困難は顕著で、全く言えなかったり、出てくるまでに時間がかかったり、言葉の最初の音(語頭音)が出なかったり、音韻性錯語になってしまったりするといった症状がみられます。復唱も障がいされます。
文章の形も単純化し、助詞を省略してしまったり、誤まって使ってしまうことがあります。
文字を書く能力は話す能力と同じように障がいされます。特に仮名文字が障がいされますが、他に、文字の形そのものが崩壊したり、文法的な誤りがみられます(失文法)。
このタイプは右手足の麻痺(右片麻痺)を伴うことが多くみられます。
聴いて理解する能力が強く障がいされます。復唱の障がいは理解の程度にほぼ対応します。
話し方は滑らかで、一つ一つの音やリズム・イントネーションなども問題がありません。
話をする量は多い(時に多弁)ですが、喚語困難は顕著で、他の音に置換する音韻性錯語、言いたい単語が別の単語に置き変わってしまう意味性錯語(例.とけい→めがね)が多く、話の内容全てが意味不明になるジャルゴンなどが出現し、言いたいことを十分に伝えることができません。助詞を誤って使ってしまう錯文法もみられます。
文字を書く能力も強く障がいされます。
このタイプの人は、麻痺を伴うことが少なく、痴呆と誤解されやすい傾向があります。
ことばの機能そのものに対しては、「ことばの間違いを少なくしたり、言えることばの数を増やす訓練」「文字を読む訓練」「文字を書く訓練」「聴いて理解する力をつける訓練」などを行います。
障がいされずに残っていることばの機能を向上させるために、「補助具(コミュニケーション・ノート、ワープロ、パソコン他)を開発し、その使い方を学習する訓練」「新しいコミュニケーション方法(シンボル、絵記号、描画、ジェスチャーなど)を習得する訓練」などを行います。
その他、環境を良くしたり、家や社会で生活する力を身に付ける訓練として、「環境改善(御家族やヘルパーさんなどへ患者さんの言葉の状態を説明したり、患者さんと上手に会話をするコツを教えたりする)」「社会的技能(対人関係の技術)や仕事に就くための技能(職業技術)の向上などを図る」、「障がいへの不安などに対しての心理的サポートを行う」「障がいを受け止め、その克服の促進を促す」「障がいに関する価値観の転換を促す」ということも行います。
ことばがスムーズに言えるように「呼吸練習」「発声練習」「構音訓練」などを行います。
その他、障がいされずに残っている機能を向上させる訓練として、「補助具(トーキングエイド、50音表、ワープロ、パソコン他)の使用法を学習する訓練」なども行います。