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リハビリテーション室

ボツリヌス療法 (筋肉のこわばりの治療)

痙縮の治療

脳卒中でよくみられる運動(機能)障害の一つに痙縮という症状があります。痙縮とは筋肉が緊張しすぎて、手足を動かしにくかったり、勝手に動いてしまう状態のことです。痙縮では、手指が握ったままとなり開こうとしても開きにくい、肘が曲がる、足先が足の裏側のほうに曲がってしまうなどの症状がみられます。痙縮による姿勢異常が長く続くと、筋肉が固まって関節の運動が制限され(これを拘縮といいます)、日常生活に支障が生じてしまいます。また、痙縮がリハビリテーションの障害となることもあるので、痙縮に対する治療が必要となります。

現在、痙縮の治療には、内服薬、ボツリヌス療法、神経ブロック療法、外科的療法、バクロフェン髄注療法などがあります。患者さんの病態や治療目的を考慮して、リハビリテーションとこれらの治療法を組み合わせて行います。

 

ボツリヌス療法

ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌(食中毒の原因菌)が作り出す天然のたんぱく質(ボツリヌストキシン)を有効成分とする薬を筋肉内に注射する治療法です。

ボツリヌストキシンには、筋肉を緊張させている神経の働きを抑える作用があり、筋肉の緊張をやわらげることができるのです。

ボツリヌス療法の効果は、注射後2~3日目から徐々にあらわれ、通常3~ 4ヵ月間持続します。効果は徐々に消えてしまうので、治療を続ける場合には、年に数回、注射を受けることになります。ただし、効果の持続期間には個人差があります。

 

ボツリヌス療法の効果

ボツリヌス療法によって次のような効果が期待できます。

① 手足の筋肉がやわらかくなり、動かしやすくなることで、日常生活動作(ADL)が行いやすくなる。

② リハビリが行いやすくなる。

③ 関節が固まって動きにくくなったり、 変形するのを防ぐことができる(拘縮予防)。

④ 手足のつっぱりによる痛みがやわらぐ。

⑤ 介護の負担が軽くなる。

 

痙縮による主な姿勢異常

 

 

ボツリヌス療法は脳卒中治療ガイドラインでも高く推奨されています。

 

脳卒中後の上下肢痙縮を軽減させるために、もしくはその運動機能を改善させるために、ボツリヌス療法を行うことが勧められる。(推奨度A エビデンスレベル高)

 

痙縮による内反尖足が歩行や日常生活の妨げとなっている時に、ボツリヌス療法での筋内神経ブロックを行うことが勧められる(グレードB)

 

脳卒中治療ガイドラインより一部抜粋

 

治療場面

当院では超音波を用いて筋の同定を行い、注射を実施します。

当院のボトックス治療

痙縮の検査(評価)

筋緊張検査

筋緊張は感情、精神状態、環境要因など様々な状況により変化します。

一般的に筋緊張は安静時の筋の状態を指しますが、脳卒中後に生じる異常筋緊張は、歩いたり、日常生活場面における動作を行った際に出現することで問題となります。

 

安静時筋緊張検査

背臥位、座位、立位の安静位で視診、触診を用いて観察します。

視診では筋の形状を評価し、触診では筋の弾性を評価します。

 

動作時筋緊張検査

起き上がり、立ち上がり、歩行などの動作時における筋の変化を評価します。

 

被動性検査

検査者により、関節運動を行うことで筋の応答性を評価します。

最初はゆっくりと動かし、次に速さを変えることで筋の抵抗に変化があるか確認します。

筋の抵抗が強い場合、痙縮と判断されます。

 

 

●Fugl-Meyer Assessment

上肢運動機能66点、下肢運動機能34点、バランス14点、感覚24点、 関節可動域・疼痛88点からなる

脳卒中の総合評価。

各項目にはいくつかのサブテストがあり、0点、1点、2点の3段階評価で加算され、

総合得点は226点となる。

 

●日常生活検査

日常生活動作(Barthel Index)で項目ごとに

「できる・できない」

「どの程度介助を要するか」

「どのような場面で緊張が生じるか」などを評価。

 

●Motor activity log(MAL) 

近年、麻痺した手を生活の中で積極的に使っていくことの重要性が示されています。

MALは、生活における合計14の項目で患肢の使用頻度と動作の質を、それぞれ6段階で評価する。

使用頻度(AOU:Amount of use)とは、病前生活と比べ、どれくらい麻痺手を使えているかを示す。

動作の質(QOM:Quality of Movement)とは、病前生活と比べ、どれくらい手をうまく動かせるかを示す。

AOUの平均点が高ければ高いほど生活の中で麻痺手がよく使えており、

QOMの平均点が高いほど麻痺手を上手く使えているということが分かります。

この評価では、患者様自身が麻痺した手をどれくらい使えているか・どのくらい満足に

動かせているかを確認し、リハビリスタッフとともに目標を立てることに役立ちます。

 

ボツリヌス療法治療後のリハビリテーション

徒手による持続伸張法

筋力増強訓練

物理療法

  神経筋電気刺激(IVES、NM-F1)

ADL訓練(食事、更衣、トイレ、入浴など)

歩行訓練

 

ショックウェーブ(体外衝撃波)

近年、痙縮治療で注目されている新しい医療機器を導入しました。

筋・腱に対する効果的な物理療法のひとつにショックウェーブ治療があります。
脳卒中後の痙縮に対する効果が報告されており、ボツリヌス治療と併せることで、
相乗効果がみられることも論文報告されています。

 

 

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