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医学書 ブックレビュー

No.500

がん患者の在宅ホスピスケア

川越 厚  医学書院(定価2600円+税、2013年7月初版)

 本書も著者巻頭でも述べているように緩和医療のEBMを示すものである。とはいっても、EvidenceのEではなくExperienceのEを指すものであるが。 著者の20数年の実践からの在宅ホスピスケアの到達点を明示するものであり、原点かつ目標である地点が一冊で述べられている。 したがって、最近多い実践書の類ではなく、情報と共に著者の哲学を語った書籍とうことになる。 日頃緩和医療に接し、いろんな考え方が必要ないし勉強したい方向きであり、簡便に臨床にフィードバックしたい方には適していないと思われる。 ただ、そういった位置づけにしたいという著者の考えだと理解するが、どうしても一般論が多く、スペースもかなり割かれてしまっていて、 著者自身の考えが余り見えてこない結果となっている。学術書であるから致し方ないのかもしれないが、残念な気がした。 内容評価は 、 値段は 。 折角の単著であるから期待した割に、いろんな紹介情報が多かった一冊である。 160ページ前後の本であるが、通読するのは結構骨が折れます。情報としての量が多いためで、 この点も本当に著者が伝えたかった「気持ち」の部分だったのかと、読解力に不安のある当方は不安になってしまいました。お勧め度は、 とします。

Sep5.2013(N)

No.499

患者さんとその家族のための糖尿病治療の手引き(改訂第55版増補)

日本糖尿病学会 編  南江堂(定価650円+税、2013年7月初版)

 学会発行の患者向けの一般書。今回は血糖コントロール目標が変更となり改訂版として出版されている。 少しでも糖尿病を外来で治療されている医師にとって患者、家族が平均的にどの程度の知識、情報を持っているかは気にかかるところだろう。 その平均値なのか理想値なのかは解らないが、一つの参考と成る水準を提供する一冊である。 150ページ弱の冊子であるが、図表を含め、分かりやすさをしっかりと追求した仕上がりになっている。 さすが専門外でも知らない内容はないが、ここまで一般向けに知識が提供されているのみは驚かされる。 内容評価は 、 値段は 。 患者との距離感をしっかり測る上では確認しておきたい分野であり、そういった意味では必須の一冊であろう。 日常臨床ではここまで知って来院する方には余りお目にかかれないが、逆に、医師による患者教育が不十分である証明かもしれない。 ときどきは押さえておくべき要点なのだろう。患者の一般常識も怖ろしいものである。お勧め度は、 とします。

Sep4.2013(N)

No.498

苦手克服!人工呼吸ケア

廣瀬稔、森安恵実 編  医学書院(定価2000円+税、2013年6月初版)

 医学書院発行の看護ワンテーマBOOKの一冊である。48のポイント分けて人工呼吸ケアについて書かれている。 呼吸生理、人工呼吸の理論、挿管、安全管理、トラブルシューティング、呼吸器離脱の要点が内容の130ページ程度の小冊子である。 看護向けの、しかも入門編を想定して執筆されているので、自分の呼吸管理と距離感を考えて購入すべきであろう。 図表、シェーマが多く理解しやすいスタイルであるが、解りやすさを主体においているため、ヒトによっては得るところが余りないかも知れない。 内容評価は 、 値段は 。 以前は呼吸管理に携わる医師は結構看護向けの人工呼吸器関連本を一冊は持っていた。医師向けでは難しすぎ手が出なかった、ないし理解不能であったためであろう。 最近の医師向けの書籍もかなりこなれてきており、また、最近よく目にするのは人工呼吸など触ったことがない後期研修医クラスが多くなったこともあり、 看護向けの書籍といえど、かなり需要は減っているのと想像される。 人工呼吸管理は医師の必須アイテムではなくなって来た時代の入門編としては適しているかもしれない。お勧め度は、 とします。

Sep3.2013(N)

No.497

ヒトの心はどう進化したのか

鈴木光太郎  ちくま新書(定価780円+税、2013年6月初版)

 副題の「狩猟採取生活が生んだもの」では内容が理解しがたい。読み始めると普通の進化論関連の新書と思っています。あとがきで著者が解説しているように、 「私たちヒトはほかの動物とどかがどう異なるのか? ヒトの心はどのように特殊なのか?そして私たちヒトとはなにものなかの?」を主題とした一冊である。 ヒトの日常生活や身近のものの中にヒトらしさがあるという主張であるが、狩猟生活との関連を含めて最初は理解しにくかった。 割り切って単なる進化論解説の本と思えば、多分購入もしなかったかもしれないが、心の進化を知りたくて読んでも、理解できた気にはならなかった。 多分、当方の読解力の問題であろう。 内容評価は 、 値段は 。 どんなに良書でも、自分には合わないと感じるときがある。正直、本書は通読するのに骨が折れた。多分に読むリズムが作れなかったためであろう。 波長の合う方が読むと200ページ強の新書だから、印象も異なるでしょう。でも、著者が苦労して執筆した雰囲気がだけが伝わってくる気がした書籍でした。お勧め度は、 とします。

Sep2.2013(N)

No.496

生命の歴史 進化と絶滅の40億年

マイケル・J・ベントン  丸善出版(定価1000円+税、2013年5月初版)

 オックスフォード大学出版局から企画・発行されているVery Short Introductionという叢書シリーズの一冊である。 たしか、この叢書からは生命倫理や医療倫理、グローバリゼーションなどのテーマが岩波書店含め他の出版社から翻訳発行されているので、知っている方も多いのではと推測される。 本書は生命の歴史で、40億年前の化学物質であるタンパク質や核酸が生命として機能していく過程から新生代のヒトの進化までが、幅広くしかも解りやすく解説されている。 250ページ前後の冊子であり、新書感覚で通読できます。 原書は2008年の出版のため最近数年間の進歩についても翻訳者が訳者前書きで補足しているなど隅々まで行き届いた一冊となっている。 内容評価は 、 値段は 。 こういった書籍を手に取るとすぐにスティーヴン・グールドのカンブリア紀爆発を扱った「ワンダフル・ライフ」を思い出す。 NHKの特番にもなった本であるが、その位置づけが学術的にはきびしい。 そのグールド自身も既に他界されているが、腹膜の悪性中皮腫で予後数ヶ月を診断され、治療せずに放置しそれとは無関係に無くなっている。 おまけのことをいろいろ思い出す一冊となった。お勧め度は、 とします。

Sep1.2013(N)

No.495

糖尿病治療ガイド2012-2013

日本糖尿病学会 編  文光堂(定価700円+税、2013年6月初版)

 20号ほど前にレビューで紹介した科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013(日本糖尿病学会 編)南江堂(定価3800円+税、2013年6月初版) をまとめ直して100ページほどの小冊子に学会みずからしたもの。今回の変更点はHbA1cの国際化標準に伴う変更について(2012年4月1日) と血糖コントロール目標について(2013年6月1日)の2点である。変更点の明示や読みやすいスタイルなど前著と同じ路線が踏襲され、臨床の場ですぐ使えるものになっている。 本当に、ありがたい。多分、内容からだけでは、2冊購入する必要はない。しかし、使用用途が普通は違うのだろう。一冊は診察室、一冊は医局であろうか。 余計なお世話かもしれないが。 内容評価は 、 値段は 。 2冊の学会編集の書籍の出版元が違うのは、日本的なのだろう。でも、あくまでもガイドラインのレベルの提示は学会のホームページにおいて無料で提供されるべきなのだろう。 それでも、読む人はそれほど増えないかも知れないが、チェックする人は増えるだろう。如何なものか。お勧め度は、 とします。

Aug31.2013(N)

No.494

臨床医が知っておきたい てんかんとイオンチャンネル病の基礎知識

鬼頭正夫  診断と治療社(定価3400円+税、2013年5月初版)

 小児科医である著者が今まで研究してきた内容を一冊の書籍化したもの。ただ、基礎研究とその解説が主体であり、余り小児科に寄った記載ではない。 逆に言うと、臨床の現場に即した内容でもなく、「臨床医が知っておきたい」は臨床医でも知っておくべき基礎知識ということだろう。 以前読んだイオンチャンネル病関連の本が面白く購入。一般論からてんかんについての解説、そして抗てんかん薬とイオンチャンネルの関連が解説されているが、 ほとんど基礎の薬理学であった。前回の興味も吹っ飛んでしまい。今回のチョイスは失敗であった。全体で100ページ程度の書籍であるが、通読にも苦労した。 内容評価は 、 値段は 。 読むべき人が読めば楽しいのかも知れないが、一「臨床医」が読むべきか、知っているべきは全く別の話なのだろう、この本にとっては。 本としては基礎と臨床のバランスがとれていないと感じてしまった。自己満足とまでは言わないが。お勧め度は、 とします。

Aug30.2013(N)

No.493

うつ病の現在

佐古泰司、飯島裕一  講談社現代新書(定価760円+税、2013年6月初版)

 最近よくある「うつ病」本の一つかと思い、単にチェックするために購入した。とんでもない誤解であった。本当に分かりやすかった。 でも、なぜこんなに理解しやすいのか、とも思った。そうか、新聞の連載記事の書籍化であり、執筆者も医師でなく記者の方なのだと気付き、納得できた。 最新の知識と蘊蓄を自由に駆使できるが、一般的には表現力に乏しく、読み手の存在にまで気を遣わない医療関係者の書籍より、 まずは近寄りやすい状態になければ無視されるだけの一般書でなければならないものとの差がやはり出るのであろう。 いわゆる「新型うつ病」から始まり、従来型のうつ病、DSM-ⅣからⅤへの変更点、鑑別診断、家族含めてのケアと章立てだけみても最新の医学書と何ら変わりはない。 取材とはすごいものだ。 内容評価は 、 値段は 。 まず、解りやすい。そして通読できる分量である。価格も適切。最新の内容が紹介されている。 など、新書の特徴をうまく活かせて執筆されている。記者の方にここまで書かれたら脱帽である。いや、本当にまいりました。お勧め度は、 とします。

Aug29.2013(N)

No.492

MB ENTONI No.154 耳鼻咽喉科外来における救急医療

鈴木幹男 編  全日本病院出版会(定価2500円+税、2013年6月初版)

 実態は雑誌であるが書籍として扱われるシリーズの一冊。大抵は100ページ弱の小冊子でありすぐに通読でき、ときどき面白いテーマに遭遇する。 同じ出版社より各分野について発行されているが、本書は耳鼻科領域のシリーズの新刊であり、以前にも数冊購入したが、今回は救急が取り上げられている。 外来での救急がメインで、離島における耳鼻科救急の実態や頻度も紹介されており、その上、耳鼻科外来における急変にも触れられており、大変楽しく読める。 企画、編集がうまい、という一言であろう。小児救急、めまい、難聴、鼻出血、急性喉頭蓋炎、頚部膿瘍、外傷、異物などよく出てくるものもしっかり押さえられている。 内容評価は 、 値段は 。 すぐ耳鼻科に紹介できる環境であればよいのだが、地理的条件、時間(深夜など)的条件など、夜中はそう甘くなく、 対応に迫られるときに必要となる分野の一つが本書にある。めまいの診療におけるITの利用を含めときどきはUpdateが必要なのだろう。お勧め度は、 とします。

Aug28.2013(N)

No.491

「動かない」と人は病む

大川弥生  講談社現代新書(定価760円+税、2013年5月初版)

 「生活不活発病」と命名した介護学、リハビリテーション学の専門医が啓蒙のために一筆した新書。 生活が不活発なことが原因で生活動作の困難が症状としていろいろ出てくるというものである。 影響としては、心臓の働きの低下・起立性低血圧・食欲不振や便秘などの胃腸の働きの低下など全身的になるものや、 関節の拘縮・筋力低下や筋萎縮・骨萎縮・褥瘡・静脈血栓症など部分的なもの、知的活動低下・感情の鈍麻・無関心・ 「うつ」状態など精神神経的なものなで後半にわたるとして紹介されている。命名は別として以前よりあった疾患概念であり、その歴史も紹介されていて、 全体を通読するのはそれほど苦労なく可能です。多分に現場で感じていることが文書化された気がし、納得できることが多くありました。 内容評価は 、 値段は 。 現場から感じ、聞いて生まれてきた考えや情熱は誰から見ても楽しく、得る箇所のある書籍となるのでしょうか。 何か奇をてらった新書も多くなった気がしますが、本書のようなオーソドックスな新書スタイルには好感が持てます。あくまでも一般向けの書籍でありますが。お勧め度は、 とします。

Aug27.2013(N)

No.490

武術と医術 人を活かすメソッド

甲野善紀 小池弘人  集英社新書(定価760円+税、2013年6月初版)

 当方には全くムダの一冊であった。医術と武術のコラボレーションから何が生まれるのかを知りたく購入した。 通読すると、古武術の達人と統合医療の達人が自分の信じるところをお互いに述べ合っているが、そこからなにか生みだそうとする意志も感じず、方向性も示されていない。 ここの主義、主張はそれなりに面白く読めるが、自己の立場の正当性を強調する余り、キワモノホンとは紙一重の存在にも見えてします。 また、一般論としての「人を活かすメソッド」は記載されていない。各々の立場で、自分たちの言うことを信じてくれるのなら、あなた自身は救われる的な、 宗教性はないが、とういったとらえ方もできそうな雰囲気が漂う。 内容評価は 、 値段は 。 新たな情報もなく、心に届く著者の主張も感じず、時間を費やした価値があるのかと自問しています一冊となった。 もちろん当方の自己責任であるが。読後に著者と自分との間のズレを最近読んだ中で一番感じた書籍である。お勧め度は、 とします。

Aug26.2013(N)

No.489

リハビリテーションと地域連携・地域包括ケア

日本リハビリテーション医学会 監修  診断と治療社(定価3800円+税、2013年6月初版)

 日本リハビリテーション医学会設立50周年記念書籍として刊行された書籍で、病院から地域へ、シームレスなリハビリテーションの提供を目指し、 超高齢社会ではたすべきリハビリテーションの役割と求められる連携のあり方を事例に基づいて解説されている。 学会設立50周年のキャッチフレーズが「生きる時を、活かす力。リハビリテーション医学」であり、 それに沿って学会の診療ガイドライン委員会と連携パス策定委員会が編集されている。ただ、通読してすぐに分かることであるが、ほとんどが各論で構成されている。 つまり、地理的な地域別、病院設立母体別などの区分ごとに解説、紹介されているが、その反復であり、現状を分析・理解するにはよいが、 これから地域連携や包括ケアを学ぼうとか、作っていこうとすると、どれほど実用的か、と若干不安になる部分も存在する。一種業績集のような有り様である。 内容評価は 、 値段は 。 雑誌によく掲載されている病院紹介を数年分まとめて書籍化したような形態であり、読み飛ばすには肩はこらないが、 学会のしかもガイドライン委員会が編集するような書籍である必要は・・・と思っています一冊である。ここの執筆者の熱意は感じされるが、 全体として何が言いたいのか、すぐにはアタマに入ってこないと思ってしまうのは小生だけであろうか。お勧め度は、 とします。

Aug25.2013(N)

No.488

高齢者保健福祉マニュアル

安村誠司 他編  南山堂(定価3500円+税、2013年6月初版)

 その名の通り、高齢者、超高齢社会に関する最新で正しい知識の提供を目的に編集された一冊。 2011年3月11日の東日本大震災の前に企画であったため、高齢者が災害弱者であるという観点から、災害時の高齢者支援の章も追記されている。 もともとの構成は、老化、健康と寿命、健康つくり、老年症候群、高齢者看護とリハビリ、高齢者医療制度、福祉と介護サービス、終末期の対応、 政策立案と事業評価からなっている。ということは、国の施策によりすぐに最新でなくなるという、そもそもの立ち位置であり、 確かに現時点では見やすく使い安い書き方であるが、誰がこの本が必要なのか、とも思ってしまう。政策にまで踏み込むときの難しいが付きまとう分野の書籍である。 内容評価は 、 値段は 。 一回通読すると、その分野の全体像が見えてきて面白く感じるが、繰り返して読まず、また、マニュアルとして再三使用するかというとそうでもない。 何か中途半端な使い方になって本棚に埋まってしまいやすい「たぐい」の本である。少なくとも自分にはそう思ってしまう。結局は自分次第の問題ではあろうが。お勧め度は、 とします。

Aug24.2013(N)

No.487

こうして組織は腐敗する

中島隆信  中公新書ラクレ(定価820円+税、2013年6月初版)

 副題の「日本一やさしいガバナンス入門書」に惹かれ購入した。ただし、失敗であった。 著者が直接関与した野球賭博事件での日本相撲協会の問題や仏教寺院、NPOなどを取り上げ、一種ケーススタディを通しての解析が主体の新書で、 解説はあるがどのようにすればという部分は思った以上に希薄である。この点を期待して購入すると結構がっかりするかも知れない。 ただ、そこは慶応の教授が書かれた一冊であり、解説自体は本当に面白いものがある。週刊誌的な視点で述べられているため、興味を持って通読しやすい内容にはなっている。 内容評価は 、 値段は 。 組織のあり方を、ガバナンスを通して再度理解したい方には適しているが、実務としてどうしようという方には有用ではないかもしれない。お勧め度は、 とします。

Aug23.2013(N)

No.486

新・医療ビジネスの闇

﨑谷博征  学研(定価1900円+税、2013年6月初版)

 1年ほど前に同じ出版社からでた「医療ビジネス」の増補改訂版らしい。読んだ気がするのだが、探しても本自体が見つからない。 その時の感想がどうだったかも、記憶にない。では、今回はどうだったかというと、面白く読めた。 ただ、いわゆる「きわもの」と紙一重というのが実感である。いろんな角度から現在の医療を解説し、特に医療ビジネス関連のテーマには手厳しいものがある。 ただ、著者の持論であろう、最後は食育に集約されている気がする。精神神経免疫学とバイオダイエットが専門の著者ならでは、であろうか。 内容評価は 、 値段は 。 面白かったが読後に余り残らなかった。ひょっとして、以前の版を読んでいるからかも知れない。 どちらにしても、かなり読み手を選ぶ一冊であろう。その手の本が好きな方という意味である。お勧め度は、 とします。

Aug22.2013(N)

No.485

高血圧診療のすべて

島田和幸 他監修  日本医師会(定価5500円+税、2013年6月初版)

 日本医師会が発行する医師会雑誌の特別号で、生涯教育シリーズの第84巻である。 多分、書籍として購入するより冊子として医師会から送られて来るのをお持ちの方が多いと思われる。 全体で370ページ程度の本であり、図表が多く使用されていて読みやすいスタイルとなっている。 基礎から臨床まで、まさしく「診療のすべて」を網羅する目的が達成されたと思われる。 一例を挙げれば、二次高血圧を疑うタイミング、検査手順、専門医紹介が適切に述べられている。分かり安く、かつ、コンパクトというのが特徴の一冊である。 高血圧にての現在の臨床現場でのスタンダードを確認したい方にもうってつけということになる。 内容評価は 、 値段は 。 敢えて欠点ということになると、やはりコンパクトということは反面、情報量が少ない、つまり、根拠の提示がやや手薄ということになる。 最近はなかなか高血圧というだけでは専門医に紹介しにくいのが現実のような気がする。 今まで以上に、非専門医が決着を付ける機会が多いのではと思われ、結果として本書の重みが増す気がする。お勧め度は、 とします。

Aug21.2013(N)

No.484

脳に刻まれたモラルの起源

金井良太  岩波書店(定価1200円+税、2013年6月初版)

 岩波科学ライブラリーの一冊で、著者は海外在住の脳科学・心理学者である。100ページ少しに小冊子であるが、内容は濃い。 倫理学として買い求めた訳ではなかったが、そういった色彩が強い。有名なトロッコのジレンマや歩道橋のジレンマなどモラルジレンマが取り上げられており、 社会心理学としての倫理観記述のための概念として5つの道徳感情が根幹をなしているとし、 (1)傷つけないこと(2)公平性(3)内集団への忠誠(4)権威への敬意(5)神聖さ・純粋さである。 ジョナサン・ハイトらの提唱により根源的な倫理観の要素(モラルファンデーション)と呼ばれているらしい。全くお恥ずかしい話、初めて聞いた内容でした。 所詮、当方の倫理の勉強はこの程度なのだろう。 内容評価は 、 値段は 。 全体として、副題の「人はなぜ善を求めるのか」をオキシトシン、ソーシャルキャピタルなどのキイワードを用いながら、解説し幸福のあり方を示し、 「脳自身が癒される、そんな社会が望ましい」とする著者の気持ちが伝わってくる一冊である。また、違った倫理観の勉強にもなります。お勧め度は、 とします。

Aug20.2013(N)

No.483

慢性頭痛の診療ガイドライン2013

日本神経学会・日本頭痛学会 監修  医学書院(定価3500円+税、2013年5月初版)

 今回出版が予定されている6神経疾患と合わせて出されたガイドライン。ちなみに、神経疾患の方は3つ既に紹介済みで、残りは筋萎縮性側索硬化症、 デュシェンヌ型筋ジストロフィー、重症筋無力症である。本書が一般臨床で必ず必要とされる慢性頭痛を扱っている。 頭痛一般から片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛と三叉神経・自律神経性頭痛、その他の一次性頭痛、薬物乱用頭痛、小児の頭痛、遺伝子の順番で取り上げられており、 スマトリプタン在宅自己注射、バルプロ酸による片頭痛治療、プロプラノロールにおる片頭痛治療についても付録として収載されている。 個人的には今、外来診療で実際に行っている頭痛診療の質的な確認、他の海外のガイドラインとの対比(例えば最近のAANの片頭痛予防策のガイドラインとの違い) などに読みながら使っていることに気づいた。 内容評価は 、 値段は 。 内容のせいか、今回は350ページ前後あったが、読みやすかった。いつも接している領域のためか、リアルでアタマに入りやすいのであろう。 とはいっても、同じ条件下の末梢神経障害の場合は全く負け戦ではあったが。まずは、必須の一冊であろう。お勧め度は、 とします。

Aug19.2013(N)

No.482

一目でわかる輸液(第3版)

飯野靖彦
メディカル・サイエンス・インターナショナル(定価2800円+税、2013年5月初版)

 初版が1997年、第2版が2003年、そして今回の第3版。本書は飯野先生による改訂三部作の最後の一冊である。 再三著者自ら、薄い本として出版することに意味を見いだそうとしているように意思表示しているが、今回も100ページ前後のボリュームである。 3冊目でやっと1項目2ページで全てがまとめられていて、原則項目の末尾に引用文献を付けている。 イラストなども駆使し結構大胆にスペースに入るよう工夫されていることに気が付いた。3冊目で分かるとは、当方の感性もしれていることに間違いはないが。 そういうスタイルにこだわり、美学を飯野先生は感じておられるだろうか。当方には内容だけではなく、そういったスタイルがあったリズムよく通読できた気がする。 内容評価は 、 値段は 。 内容は本当にオーソドックスである。その上、批評家めいた解説や自己主張はほとんど見られない。これも、著者の美学として見てしまう。そういった一冊です。お勧め度は、 とします。

Aug18.2013(N)

No.481

感染予防、そしてコントロールのマニュアル

岩田健太郎 監修
メディカル・サイエンス・インターナショナル(定価4500円+税、2013年6月初版)

 Nizam DamaniによりOxford University Pressから2012年に発行されたManual of Infection and Control, 3rd edの翻訳が本書である。 関東労災病院と神戸大学の感染症のグループで訳されている。本書の立ち位置は監修の岩田先生が序文で明確に表現されている。 感染症診療のバイブルがマンデルで感染予防・コントロールのそれはメイホール。両方とも大著であり英語である。 役立つマニュアルが必要。感染症診療のマニュアルの鉄板は青木眞先生のマニュアルである。しかい感染予防・コントロールにおいてはマニュアルはなかったが、 今回それを目指して翻訳されたのが本書。という内容のものです。実際は、350ページ程度でよくまとまっています。正しく標準的なかつ最新のマニュアルでしょう。 内容評価は 、 値段は 。 本書は読むマニュアルというより、使うマニュアルという位置づけでしょうか。理解していないと必ずしも分かり安く記載されていない気がします。 うまく使う、そういった工夫が必要だと思います。それにしても、「岩田」の名前が新刊リストに見ない月はいつだったか。すごいこと、すごい方です。お勧め度は、 とします。

Aug17.2013(N)



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