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医学書 ブックレビュー

No.40

新・総合診療医学 病院総合診療医学編

徳田安春編  カイ書林(定価5000円+税、2012年4月初版)

 ジェネラリストを目指す学生、研修医向けの卒前、卒後研修のためのミニマム・エッセンスが網羅された標準的テキスト。 二分冊刊行の「家庭医療学」編の続編である。前編とは逆に総論部分より、症状・徴候別の各論が大変読み応えがあった。 体重減少、浮腫などがコンパクトに、かつ実践で役立つように記載され、通読に耐えられる内容である。 ただ、残念にことであるが、記載の容量制限のためだと思われるが、簡潔過ぎてある程度予備知識がないと理解しがたい箇所が散見された。 総論、網羅的な書籍に共通する悩みかもしれない。結果として病院総合医としての概観はやや得られにくい感想を持った。 もちろん、当方の主観であるが。内容評価は、 、 値段は 。 病院総合医に興味のある方であれば、お勧め度は、 とします。

May.2012(N)

No.39

新・総合診療医学 家庭医療学編

藤沼康樹編  カイ書林(定価5000円+税、2012年3月初版)

 ジェネラリストを目指す学生、研修医向けの卒前、卒後研修のための標準的テキストとして企画された一冊。 押さえておくべきミニマム・エッセンスが漏れなく記載されている。二分冊にて刊行されており、その内の「家庭医療学」編である。 症状・徴候別の各論より、総論部分が通読する上で大変参考になった。 特に「家庭医療の臨床的方法」の章はいろんなアプローチ方法が記載されており、全く知らないものの多く参考になること請け合いである。 もちろん、当方だけかもしれないが。ジェネラリストとしての概観をつかみたい方には必須の一冊かもしれない。 内容評価は 、 値段は 。 良い意味、悪い意味、「家庭医療」の味とにおいのする書籍のためどの方にもという訳ではなく、お勧め度は、 とします。

May.2012(N)

No.38

臨床医のためのアレルギー診療ガイドブック

日本アレルギー学会  診断と治療社(定価7800円+税、2012年4月初版)

 日本アレルギー学会が策定された2010年発行の「アレルギー疾患診断・治療ガイドライン」の一般医向けガイドブックである。 日常診療で必要となる喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、結膜炎、皮膚炎、薬疹、接触皮膚炎、蕁麻疹、食物アレルギー、 ラテックスアレルギーなどの領域が網羅されている。診療のコツがちりばめられており、まさしく「診療ガイドブック」の名にふさわしい。 読むことを想定されているとも思われないが、実際は通読しやすい書籍である。 最終の章の「アレルギー疾患と心の問題」を含め、大変有用な一冊であるが、惜しむらくはアナフィラキシーの項目がないことかと思われる。 内容評価は 、 値段は 。 どの方にも手に取って頂きたいので、お勧め度は、 とします。

May.2012(N)

No.37

夜の写本師

乾石智子  東京創元社(定価1700円+税、2011年4月初版)

 日本のファンタジー界の新星。 といっても、今回が実質処女作のため、これからというところでしょうが、ある意味王道をいくファンタジーで、文学的素養もある一冊。 本という名の魔術を駆使する夜の写本師の話であるが、 魔術ファンタジーの簡単な入門解説を巻尾に井辻朱美先生が書かれているのも大変参考になります。 ストーリーの中で、胸骨圧迫や人工呼吸法などがしっかり、その当時の時代にあわせ記載されており、医療人としてホッとした面もあります。 ストーリーは面白く、本当に読みやすいため、ファンタジーが嫌いな方にもお奨めで、 内容評価は 、 値段は 。 お勧め度は、 とします。

Sep.2011(N)

No.36

線維筋痛症診療ガイドライン2011

日本線維筋痛症学会  日本医事新報社(定価4300円+税、2011年7月初版)

 日本線維筋痛症学会が策定したガイドラインである。 前回の2009年から2年後の改訂であるが、2010年にアメリカリウマチ学会が予備診断基準を提唱公開したため、 短期間での改訂も致し方ないと思われる。 内容も、以前の経験則中心のものから、かなりエビデンスの重視のスタイルに変更されており、 かといってガチガチのガイドラインスタイルではなく、「ケアおよび支援体制」や添付資料など、 実際の診療の場で必要となる項目もしっかり記載されている。 プライマリケア医には必須のアイテムと思われ、 内容評価は 、 値段は 。 ただ、やはり人を選ぶと思いますので、お勧め度は、 とします。

Sep.2011(N)

No.35

ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由

ジョシュア・フォア  エクスナレッジ(定価1800円+税、2011年7月初版)

 「記憶術」を学ぼうとしたジャーナリストの全米ベストセラーの一冊。期待して購入したが、 「だれでも大量の情報を即座に記憶する方法を身につけられる!」とのオビの言葉は、私には最後はむなしいものとなった。 誤解のないように記すると、内容に嘘はないと思った。ただ簡単なはずがなく、1年かけてトレーニングして記憶力をアップしている。 その訓練がハードかどうかは読み手が判断するしかない。 原題のMoonwalking with Einstein(アインシュタインとムーンウォークする)の意味は読むとわかるとかかれていたのですが、 最後までさっぱり解りませんでした。 多分、良い読み手ではなかったようです。 内容評価は 、 値段は 。 臨床では避けて通れない部分ですからお勧め度は、 とします。

Sep.2011(N)

No.34

神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン

日本ペインクリニック学会  真興交易医書出版部(定価1200円+税、2011年7月初版)

 神経障害性疼痛には末梢性と中枢性があるが、プライマリケアでは末梢性が主体で、 帯状疱疹後神経痛、有痛性糖尿病性ニューロパチーや三叉神経痛がよく見る対象となる。 日本ペインクリック学会が治療のガイドラインを策定したものであるが、他のガイドラインに比しても大変読みやすく、 かつ実用的であり、すぐ診察室で利用可能な冊子となっている。 総論、各論を通してアルゴリズムも理解しやすく、表も治療薬を第一選択薬から第三まで分けて記載されており、 本当に利用する側に立った構成である。 疼痛を相手にしない臨床家はまずいないと思われ、 内容評価は 、 値段は 。 臨床では避けて通れない部分ですからお勧め度は、 とします。

Sep.2011(N)

No.33

寂滅の剣

北方謙三  新潮社(定価1700円+税、2010年2月初版)

 北方謙三氏による日向景一郞シリーズの完結編。剣豪小説である本シリーズは全5冊執筆されている。 背景は、主人公を取り巻く家族、血の系譜の問題であり、一種の成長小説ともなっている。 舞台がシリーズの中盤から薬種問屋が主になり、そこで、今で言う犬や人体を使用する臨床試験が、反復かなり詳細に述べられ、 海草や野草からの新薬の開発などとお合わせ、組織と個人の生命との対比を通じて倫理的な問題も投げかけられている。 無理に医療に関係させる必要もなく、純粋に時代小説として楽しめ、 内容評価は 、 値段は 。 臨床では避けて通れない部分ですからお勧め度は、 とします。

Sep.2011(N)

No.32

症候からたどる鑑別診断ロジカルシンキング

後藤英司他編  メジカルビュー社(定価4400円+税、2011年8月初版)

 臨床推論を、ケーススタディを通して身につけるという趣旨の書籍。 代表的な症状、徴候が網羅されており、各々2題程度のケースにてその推論を深める問うスタイルで進行する。 全文を読むという学習もあれば、困ったときに合致するケースに当たり、その推論方法を学ぶという使用法も考えられる。 ただ、臨床推論についての概説がなく、総論が最初にあればというのが惜しまれる。 従って、読み方を誤れば単なる症例集ということになります。 ここの症例は厳選されているが、折角の臨床推論が希薄なので、 内容評価は 、 値段は 。 臨床では避けて通れない部分ですからお勧め度は、 とします。

Sep.2011(N)

No.31

生きること学ぶこと

広中平祐  集英社文庫(定価476円+税、2011年5月初版)

 世界的数学者でありフィールズ賞受賞者が30年前に書いた人生論、学問論の文庫版。 内容はストレートで読みやすい。たとえば、研究態度・生活態度して大切にしているのは、 事実を事実としてとらえること、仮説を立てること、事象を分析すること、それでも生き詰まった時は大局を観ること、 の4つを「単純明快」としていたこととしている。 この「単純明快」を「素心」で、つまり相手の立場に立てることが、創造につながるのであるというには、参ったと一言です。 本の中でいろんな方に会いたい人向きですが、 内容評価は 、 値段は 。 一読の価値ありで、お勧め度は、 とします。

Sep.2011(N)

No.30

対話・コミュニケーションから学ぶスピリチュアルケア

谷口憲俊 他編  診断と治療社(定価2800円+税、2011年7月初版)

 スピリチュアリティを単に宗教的側面が強く「霊的」と理解していましたが、 「たましい性」という理解が正確であると最初に記載されており、個人的には頭にガツンときました。 こういった議論や宗教、特に日本では仏教との関連など、理解できない部分があるとスピリチュアルケア自体を避けて通っていたりします。 臨床での実践を伊藤高章先生の総論で読むと非常に頭の中が整理されます。 でも、以前同僚であった瀬良信勝先生の「緩和ケアにおけるスピリチュアルケア」の項を読むと読みやすくホッとしました。 内容評価は 、 値段は 。 お臨床では避けて通れない部分ですから勧め度は、 とします。

Sep.2011(N)

No.29

仏教漢語50話

興膳宏  岩波新書(定価720円+税、2011年8月初版)

 仏教に由来する数多くの漢語の中から50の言葉を選び、その語源と意味をやさしく説き明かした岩波新書の一冊。 「阿吽」から始まり「禅」、「涅槃」が続き「唯我独尊」で終わる。 「睡眠」の項では元々「すいめん」と読み、生きていく上でやむを得ない無駄な時間のひとつとして挙げられている。 「人間」では、「じんかん」と読み、世間や世の中といった意味で使用されることがあり、 現在の中国では「ひと」という意味ではなく「じんかん」としての使用が主であることなど、蘊蓄が一杯である。 漢字が好きなら良いのですが、 内容評価は 、 値段は 。 お勧め度は、 とします。

Sep.2011(N)

No.28

「かかりつけ医」のための認知症診療ガイドライン

遠藤英俊  医薬ジャーナル社(定価2600円+税、2011年8月初版)

 患者さん向けかと思ってしまう装丁なのですが、75ページという短い中に濃い内容が書かれたプライマリケア医対象の書籍です。 2010年の認知症治療ガイドラインに沿って記載され、 以前以上に日常臨床で遭遇される頻度の高い疾患への対応が現場ですぐ役立つように工夫されています。 個人的にはレビー小体型認知症とパーキンソン病との関連性の知識の整理や薬物療法、 特にメマンチンの使用法について大変参考になりました。 安易に診断し、また、画一的な治療になりがちな認知症をもう一度見直す際に、導入としては最適な一冊を思います。 内容評価は 、 値段は 。 お勧め度は、 とします。

Sep.2011(N)

No.27

心星ひとつ

高田郁  ハルキ文庫(定価590円+税、2011年8月初版)

 人気の書き下ろし時代小説である「みをつくし料理帖」シリーズの第6巻。 主人公である澪(みお)が女性であり、若いというハンディキャップにもかかわらず成長を遂げていくというある種典型的時代劇であるが、 料理を通して、心を癒し人を癒していくというスタイルは医療そのものである。 「八朔の雪」「花散らしの雨」「想い雲」「今朝の春」「小夜しぶれ」と続いてきたシリーズであり、 タイトルのみを眺めても心が安まる気がします。ほっとしたいひとときを希望される方に向いていますが、 内容評価は 、 値段は 。 時代小説が苦手という方も読みやすく、お勧め度は、 とします。

Sep.2011(N)

No.26

ことばもクスリ

山内常男編  医学書院(定価2500円+税、2011年8月初版)

 医療において言葉が存在しないケースはない。 反論する医師がほとんどないほど重要なのに、言葉の使い方をどのように学ぶかは明らかではない。 コミュニケーション・スキルの講習などでは編者らのいう言葉の「文化」的側面が希薄になっている気がするからである。 副題である「患者と話せる医師になる」ために、原点に立ち返る意味も含め、一読をすべての医療人に薦めます。 いろんな場面での実際的な対応がコメントされており、徳永進先生の「一の言葉」「二の言葉」の持つ意味がよく理解できます。 内容評価は 、 値段は 。 医療人として必須の心得である以上、お勧め度は、 とします。

Sep.2011(N)

No.25

人間を信じる

吉野源三郎  岩波現代文庫(定価1160円+税、2011年5月初版)

 言わずと知れた初代雑誌「世界」の編集長が若い人に向けて語った人間論、人生論の一冊。 「君たちはどう生きるのか」を読んだ方も多いと思います。「人間への信頼には危険が伴う。 しかしこの賭けなしには人間の世界は死人のように冷えてゆくしかない竏秩B」 というまっすぐかつど真ん中のテーマを語り、「人間を愛し人間を尊重する」というヒューマニズムの精神には 医療人として学ぶべき点は多々あります。一人の思想を学ぶという側面が強く、 内容評価は 、 値段は 。 医療人として必要なハートは何かを少しは気にしている方には一読の価値あり、お勧め度は、 とします。

Sep.2011(N)

No.24

極論で語る循環器内科

香坂俊編著  丸善出版(定価3000円+税、2011年7月初版)

 最近売り出し中の若手医師の中でも特に著名かつ人気の高い慶応義塾大学循環器内科香坂先生の多分初めての書籍です。 これだけでも飛びつく人が多数いると思います。 その上、「極論」という形での専門の循環器疾患のポイントを定評のある解説でまとめられた一冊です。 11の小編が各々4つの極論で総括されており、高度な内容ではないですが、さすがにツボを押さえたわかりやすい内容になっています。 特に初期研修医から後期研修に入りたての方に適しており、 内容評価は 、 値段は 。 個人的には香坂先生の単独著書を早く読みたいこともあり、お勧め度は、 とします。

Sep.2011(N)

No.23

チェルノブイリ診療記

菅谷昭  新潮文庫(定価400円+税、2011年7月初版)

 原発災害、放射線関連の今はやりの一冊と思って軽視して購入。十三年前が初版の今回は新版にて文庫化。 内容はしっかり書かれている上に、「一度しかない人生を歩むとするのなら、己がどう生きたかが一番重要なのではなかろうか」 という一文にしびれる。著者の経歴を見ると、国立大学の助教授を退職しチェルノブイリのためにベラルーシに単身滞在。 5年半後に帰国後、驚くなかれ現在は松本市長となられている。言行一致の人、そのものと感動しました。 治療としては歴史的な意味あいもあり、 内容評価は 、 値段は 。 ただ、生き方はすごく、お勧め度は、 とします。

Sep.2011(N)

No.22

医療・介護関連肺炎診療ガイドライン

日本呼吸器学会  日本呼吸器学会(定価3000円、2011年8月初版)

 日本呼吸器学会の医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン作成委員会による学会ガイドラインの1冊。 悲しいかな有料であり、学会HPでも現時点でも公開されてない。 高齢化を迎える医療環境では大切かつ重要な領域であり、医療関係者の関心も高いと推察されるが、 本文のみで39ページでありこの価格である。内容は、理念、定義から治療区分やリスク評価、検査、抗菌薬の選択が紹介され、 興味の持たれる誤嚥性肺炎とワクチンの問題は32ページ以降になる。もう少し詳細な記載が欲しかった。 内容評価は 、 値段は 。 学会ガイドラインである以上、お勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.21

ジョージ五世

君塚直隆  日経プレミア(定価890円+税、2011年6月初版)

 今年のアカデミー賞を取った「英国王のスピーチ」主人公ジョージ六世の父であり、 当然、現エリザベス二世女王の祖父になる国王を当時の英国を中心に何冊も上梓されている君塚先生が執筆されたもの。 読むまでは一般人には興味がない領域で、特に医療人には無関係と思っていました。 実際、医療自体にはそれほど関連はありませんが、有名な「私は決して賢い人間ではない。 しかし、もし私がこれまでに出会ってきた優れた頭脳たちから何も引き出すことができなければ、 私はただの阿呆と言っていいだろう。」という言葉が生き方を通して見えてくるところはすごい。 内容評価は 、 値段は 。 お勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)



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