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乳腺センター

乳がんの手術

乳がんの手術は、乳房の手術とわきのリンパ節の手術の2つに分けて考えます。

 

乳房温存手術について

適応として推奨される乳がんの大きさは3cm以下で、良好な整容性が保たれるのであれば4cmまで許容されます。乳腺円状切除部分切除と乳腺扇状切除の2種類があります。

いずれの場合も乳房は残りますが、多少の変形はあります。

 

乳腺円状部分切除術

乳がんを含めた周辺の乳腺組織(1~2cm)を切除する方法です。

 

 

乳腺扇状部分切除術

乳がんを含めた4分の1を乳頭中心にして扇状に切除する方法です。

 

 

 

乳房切除術について

乳房切除の場合は乳房を全てとります。切除範囲の広い場合には植皮の必要となる場合があります。

 

胸筋温存乳房切除術

乳房をすべて切除する方法です。胸筋の一部を切除することもあります。

 

皮下乳腺全切除

乳頭を残して乳腺をすべて切除する方法です。

 

胸筋合併乳房切除術

乳房すべてと胸筋すべてを切除する方法です。

 

 

わきのリンパ節の手術

乳房内の癌細胞が最初に転移するリンパ節のほとんどが「わきのリンパ節(腋窩リンパ節)」です。腋窩リンパ節は腋窩の脂肪の中に存在しており、リンパ節の取り残しがないよう脂肪も含めて切除することを「腋窩リンパ節郭清」と呼びます。 切除した後リンパ節を取り出して転移があるかどうかを調べます。転移がある場合は、転移のない場合と比べて手術後に他の臓器に転移する確率が高いことがわかっています。

腋窩リンパ節郭清は乳がんに対する標準治療として行われてきましたが、2000年代前半からはより負担の少ないセンチネルリンパ節生検が普及しはじめ、 現在では触診や画像診断などで腋窩リンパ節への転移がないと判断した場合はまずセンチネルリンパ節生検を行います。センチネルリンパ節とは乳がんからのリンパ流が最初に流れ着くリンパ節のことで,がんが最初に転移するリンパ節と考えられています。日本語では前哨リンパ節,中間リンパ節と呼ばれています。

病理検査でセンチネルリンパ節に転移がなければ、リンパ節の郭清を省略することが可能です。 一方、手術前に腋窩リンパ節転移があると診断された場合は最初から腋窩リンパ節郭清を行います。

 

腋窩リンパ節郭清

従来から行われているリンパ節をすべて摘出する方法です。手術前に腋窩リンパ節転移が疑われる方や、何らかの原因でセンチネルリンパ節生検ができない方、センチネルリンパ節生検で術中に転移が見つかった方に行います。

この方法では腋窩のリンパ節を一定範囲しっかり切除しますので、転移の有無や転移の個数が正確に診断できますし、腋窩リンパ節への再発の予防にもなります。しかし、手術をした方の腕がむくんだり、腋の違和感、しびれ、感覚の低下など合併症が起こる可能性があります。腕や肩が動かしにくくなるのを予防するためのリハビリテーションや、リンパ浮腫の予防などについては随時必要なケアを行っていきます。

また、最近の研究結果を踏まえ、リンパ節転移の大きさや個数、乳がんの性質、術後予定される治療、患者さんの年齢などを考慮した上で、腋窩リンパ節郭清を省略することもあります。

 

センチネルリンパ節生検

センチネルリンパ節生検法とは,手術中に特殊な色素を注入して,センチネルリンパ節を探し出し,このリンパ節に転移があるかどうかを調べることをいいます。手術前に腋窩リンパ節転移がないと診断されている方が対象になります。センチネルリンパ節に転移がない場合,残りのリンパ節(腋窩リンパ節)にも転移がないと考えられるため,腋窩リンパ節の郭清を省略する目的で行います。

 

 

乳がんの手術の基本はがん組織を完全に切除することですが、取り残しをなくそうとして切除範囲が大きくなればなるほど残った乳房が変形します。このため、当センターでは術前化学療法によって乳がんを小さくしてから手術を行う、広背筋皮弁による乳房同時再建術を行う、なるべく目立たない部分に皮膚の切開を加えるなどを組み合わせることによって乳癌の根治性と整容性を両立させることに努めています。 

 

乳房再建について

乳房再建とは、手術によって失われた乳房を再建することです。乳房を再建することで再発が増えたり、再発の診断に影響したりすることはありません。

乳房再建には大きく分けて、自家組織による方法と人工乳房による方法があります。2013年7月より、人工乳房による乳房再建に関しての保険適用が認められました。本院は日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会よりインプラント、エキスパンダーの使用それぞれについて実施施設認定を受けています。 また、乳がんの手術と同時に再建手術を行うものを「一次再建」、乳がんの手術後に改めて再建手術を行う場合を「二次再建」といいます。以下では再建法について簡単にご説明します。

 

乳房再建の方法について

自分の体の一部を胸に移動することで乳房を再現する「自家組織移植法」と、シリコンバッグなどの人工乳腺を使用する「インプラント法」があります。

 

 

自家組織移植法による再建

人工乳腺を体に入れるのが嫌な方、人工乳腺による乳房再建の適応のない方、大きな乳房の再建を希望される方などは、自分の体の一部を使用して乳房再建を行います。これを、「自家組織移植法」と言います。これには、お腹の組織を使用する「腹直筋皮弁法」と背中の組織を使用する「広背筋皮弁法」の2つの方法があります。

いずれの方法も下腹部あるいは背中に傷が残ります。人工乳房に比べると手触りや形態は自然で、人工乳房と違い自分の体の一部となりますので、後々の感染やトラブルの心配がありません。 しかし、血行の問題から移植組織がうまく生着しない可能性が低確率ですがあります。また、放射線治療後にも行えます。

 

人工乳房による再建

乳房を切除した後、エキスパンダーという皮膚を伸ばす袋を胸の筋肉の下に入れ、その袋の中に徐々に生理食塩水を入れて皮膚を伸ばし、乳房の形に膨らませます。 その後、エキスパンダーを取り出して人工乳房(シリコンインプラント)に入れ替えるという方法(2期再建)です。1回の手術でインプラントを挿入する方法(1期再建)もあります。

自分の体の組織を使用しないので、体の他の部位に新しいキズを付けずに済むことや、手術時間が短く体への負担が軽いことなどが利点です。しかし、破損や感染、露出などのトラブルの可能性や、将来入れ替える必要があるかもしれないことなども考えておく必要があります。

 

再建法を決定するためには、癌の進行度合い、今後の治療予定などについても考慮する必要があります。乳房再建を希望される場合、 それぞれの再建方法について良い点、悪い点を形成外科医から説明を受けていただき、乳腺外科担当医とも十分話し合った上で手術方法を決定することが大切です。

 

乳輪・乳頭の再建

前述の各種の乳房再建法を行った後に、乳輪と乳頭を再建する必要があります。再建後は、乳房の形態が落ち着くまで数ヶ月間の経過観察を行い、その後に乳輪と乳頭を作成します。局所麻酔で再建が可能です。

 

 

 

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